『オンブレ』 新潮文庫
エルモア・レナード(1925-2013)の『オンブレ』を読了しました。エルモア・レナードはエドガー賞も受賞したアメリカのミステリ畑の作家ですが、私が彼の作品を読むのは初めてのことでした。村上氏による翻訳で「のんびり楽しんで」と日本の読者に向けて差し出された西部劇小説ですが、正直なところ、あまり読み応えのようなものは感じられませんでした。読むタイミングが良くなかったのでしょうか。
【満足度】★★☆☆☆
納富信留の『プラトンとの哲学 対話篇を読む』を読了しました。著者自身が「あとがき」において触れているように、既に岩波新書にはプラトンを主題とした作品が2つもラインナップされています。そのうちの一冊は藤沢令夫氏の『プラトンの哲学』で、誰が見ても明らかな名著なわけですが、そのような中で新たに本書を世に出した著者の気概にはやはり驚かされます。
そしてその本書の内容はといえば、プラトンの著作が持つ「対話篇」という特質を十二分に引き受けて展開したもので、プラトン哲学が有する哲学の実践としてのスリリングな部分を素晴らしいかたちで哲学的な解説へと落とし込んだものになっています。『ゴルギアス』をテーマにソクラテスよりも論敵であるカリクレスへの共感を語る姿勢など、ハッとさせられる場面がいくつもあり、感動させられました。
【満足度】★★★★☆
フォースター 吉田健一訳
E・M・フォースター(1879-1970)の『ハワーズ・エンド』を読了しました。池澤夏樹氏の個人編集による世界文学全集の一冊として刊行されたもので、フォースターの作品に触れること自体が私にとっては初めてのことになります。『ハワーズ・エンド』は20世紀前半に活躍したイギリスの作家フォースターの代表作とのこと。
シュレーゲル家とウィルコックス家という対照的な2家族の間での複雑な交流を中心軸として、階級や家族を巡る価値観の揺れ動きのなかで両家の人間模様が描かれていきます。ジェーン・オースティンの『高慢と偏見』のような筋立てですが、それほどには明朗だったり無垢だったりはせず、本書を面白がるための勘所のようなものは最後まで私には解らず仕舞いでした。
【満足度】★★★☆☆