文学・会議

海外文学を中心に、読書の備忘録です。

日本文学

綾辻行人『Another 2001』

綾辻行人 『Another 2001』 角川文庫 綾辻行人の『Another 2001』を読了しました。半年前に読み直したシリーズ前作である『Another』とスピンオフ作品である『Anothe エピソードS』からあまり間を置かずに読もうと思っていた作品なのですが、結局はこのタイ…

吉村達也『富士山殺人事件』

吉村達也 『富士山殺人事件』 光文社文庫 吉村達也の『富士山殺人事件』を読了しました。目次ページなど随所に工夫も凝らされていて、読者を楽しませようという作者の遊び心が感じられるとともに、設定にもトリックにも本格ミステリーに対する作者の気概が感…

五十嵐律人『法廷遊戯』

五十嵐律人 『法廷遊戯』 講談社文庫 五十嵐律人の『法廷遊戯』を読了しました。映画化もされて話題となっているメフィスト賞受賞作で、現役の法曹によって書かれたミステリー作品です。法律の解釈を巡る丁々発止のやり取りはこうしたバックグラウンドを持つ…

吉村達也『ラベンダーの殺人』

吉村達也 『ラベンダーの殺人』 角川mini文庫 吉村達也の『ラベンダーの殺人』を読了しました。「三色の悲劇」と題されたシリーズ作品からの続編とし角川ミニ文庫から刊行されたのが本書です。後にはリメイクされて角川文庫に収録されています。 【満足度】★…

吉村達也『妖しき瑠璃色の魔術』

吉村達也 『妖しき瑠璃色の魔術』 角川文庫 吉村達也の『妖しき瑠璃色の魔術』を読了しました。不思議な殺人現場が描かれるとともに、物語自体も悲劇的で不穏な余韻を残したままで終わりを迎えます。今思うとなかなかに思い切った作品だと思うのですが、読者…

赤川次郎『血とバラ』

赤川次郎 『血とバラ』 角川文庫 赤川次郎の『血とバラ』を読了しました。超が付くベストセラー作家の初期短編集です。郷原宏氏による解説と及川達郎氏によるカバー画が安定のクオリティで作品を支えているという印象です。 【満足度】★★★☆☆

吉村達也『哀しき檸檬色の密室』

吉村達也 『哀しき檸檬色の密室』 角川文庫 吉村達也の『哀しき檸檬色の密室』を読了しました。密室トリックを表題に謳ってはいるものの、トリックそのものというよりはその“位置づけ”のようなものを描くことが、作者の狙いだったようです。結末の消化不良に…

吉村達也『美しき薔薇色の殺人』

吉村達也 『美しき薔薇色の殺人』 角川文庫 吉村達也の『美しき薔薇色の殺人』を読了しました。トリッキーなミステリー小説を志向していたこれまでのシリーズ作品に比べると、それとは別のものに比重を置いたと思われる作品作りがなされているようです。かつ…

吉村達也『由布院温泉殺人事件』

吉村達也 『由布院温泉殺人事件』 講談社文庫 吉村達也の『由布院温泉殺人事件』を読了しました。作品の出来栄えという以前に、本の中に乱丁があって、そもそもストーリーを追うことができないという珍しい状況を迎えて、何とも不完全燃焼な読書となりました…

法月綸太郎『誰彼』

法月綸太郎 『誰彼』 講談社文庫 法月綸太郎の『誰彼』を読了しました。コリン・デクスターの作品を意識したというだけあって、初めて読んだときは複雑に展開するプロットに翻弄された記憶があるのですが、今回あらためて読み返してみると、それなりにすっき…

島田荘司『灰の迷宮』

島田荘司 『灰の迷宮』 光文社文庫 島田荘司の『灰の迷宮』を読了しました。作者のセンチメンタリズムがよく出た作品で、地味ながら印象に残る小説です。 【満足度】★★★☆☆

星新一『ボンボンと悪夢』

星新一 『ボンボンと悪夢』 新潮文庫 星新一の『ボンボンと悪夢』を読了しました。こうしてあらためて作者のショートショートを読んでみると、比較的長めの作品からかなり短いもの、オチまでの道筋がシンプルに描かれる作品もあれば、捻りの加えられた作品も…

早坂吝『メーラーデーモンの戦慄』

早坂吝 『メーラーデーモンの戦慄』 講談社ノベルス 早坂吝の『メーラーデーモンの戦慄』を読了しました。過去のシリーズ作品を読んだことがある読者が楽しむことができる要素をはじめとして、正しい答えに辿り着かせるつもりのない(?)読者への挑戦状も、…

今野敏『隠蔽捜査』

今野敏 『隠蔽捜査』 新潮文庫 今野敏の『隠蔽捜査』を読了しました。いまや人気シリーズとなっている異色の警察小説の第一作目です。刊行当初からシリーズ化の構想があったのかどうかについてはよく分からないのですが、主人公の唯一無二のキャラクター造形…

北村薫『玻璃の天』

北村薫 『玻璃の天』 文春文庫 北村薫の『玻璃の天』を読了しました。シリーズ第二弾となる作品ですが、作者らしい細やかな伏線を張り巡らせた本格ミステリーであり、優れた歴史小説にもなっていると思います。登場人物を巡る謎にも進展があって、物語のクラ…

平野啓一郎『本心』

平野啓一郎 『本心』 文藝春秋 平野啓一郎の『本心』を読了しました。四半世紀後の日本という近未来を舞台に、現実の社会に確かな眼差しを据えたまま、まっすぐな思索の道筋を小説というかたちで綴ってみせた作品です。物語に登場する老作家を評して言われる…

吉村達也『セカンド・ワイフ』

吉村達也 『セカンド・ワイフ』 集英社文庫 吉村達也の『セカンド・ワイフ』を読了しました。主に集英社から刊行されている、作者が「心理サスペンス」と名付けている作品群のうちの一冊で、お互いの理想や打算のもとで成立する結婚を巡る不協和のうちに潜む…

高里椎奈『銀の檻を溶かして』

高里椎奈 『銀の檻を溶かして』 講談社文庫 高里椎奈の『銀の檻を溶かして』を読了しました。第11回メフィスト賞受賞作ということで手に取った作品なのですが、ヤングアダルトの装いのもとで、想像よりもミステリーとたろうとする意思の感じられる小説でした…

吉村達也『ナイトメア』

吉村達也 『ナイトメア』 角川ホラー文庫 吉村達也の『ナイトメア』を読了しました。韓国映画のノベライズ(作者の意図としては書き下ろし)ですが、作者の良さというものが発揮されているとは思われず、やや中途半端になってしまっているという印象です。 …

赤川次郎『うぐいす色の旅行鞄』

赤川次郎 『うぐいす色の旅行鞄』 光文社文庫 赤川次郎の『うぐいす色の旅行鞄』を読了しました。タイトルにも掲げられたアイテムを巡る思わせ振りな導入は、肩透かし以外の何ものでもありませんが、本シリーズ作品のいつもの水準どおりといったところでしょ…

清涼院流水『パーフェクト・ワールド What a perfect world! Book.12』

清涼院流水 『パーフェクト・ワールド What a perfect world! Book.12』 講談社 清涼院流水の『パーフェクト・ワールド What a perfect world! Book.12』を読了しました。僕と世界の物語と英語と京都を巡る不思議な小説(大説?)も、本巻でついにフィナーレ…

清涼院流水『パーフェクト・ワールド What a perfect world! Book.11』

清涼院流水 『パーフェクト・ワールド What a perfect world! Book.11』 講談社 清涼院流水の『パーフェクト・ワールド What a perfect world! Book.11』を読了しました。奇妙な数当てゲームの中に、パズラーたろうとする矜持のようなものが垣間見える気がし…

清涼院流水『パーフェクト・ワールド What a perfect world! Book.10』

清涼院流水 『パーフェクト・ワールド What a perfect world! Book.10』 講談社 清涼院流水の『パーフェクト・ワールド What a perfect world! Book.10』を読了しました。フィナーレへ向けての助走といった物語が展開されますが、この先には予定調和が待ち受…

清涼院流水『パーフェクト・ワールド What a perfect world! Book.9』

清涼院流水 『パーフェクト・ワールド What a perfect world! Book.9』 講談社 清涼院流水の『パーフェクト・ワールド What a perfect world! Book.9』を読了しました。本巻については、もはや英単語の羅列に過ぎないのではないかという気もするのですが、最…

赤川次郎『三毛猫ホームズと愛の花束』

赤川次郎 『三毛猫ホームズと愛の花束』 角川文庫 赤川次郎の『三毛猫ホームズと愛の花束』を読了しました。四編の作品が収録されたシリーズ短編集です。安定の展開と安定のクオリティというか、それ以上に語るべきものがない作品でもあります。 【満足度】★…

吉村達也『「横濱の風」殺人事件』

吉村達也 『「横濱の風」殺人事件』 徳間文庫 吉村達也の『「横濱の風」殺人事件』を読了しました。中学生の少年が主人公である朝比奈耕作と対峙するという物語の展開は非常に新鮮で面白く読むことができました。本格ミステリーとしての面白さは正直なところ…

関田涙『蜜の森の凍える女神』

関田涙 『蜜の森の凍える女神』 講談社ノベルス 関田涙の『蜜の森の凍える女神』を読了しました。講談社のメフィスト賞を受賞したミステリー小説で、新本格ミステリーの作法に則った秀作です。そのトレース具合に対して好感を持つ部分もあり、一方で少し鼻白…

島田荘司『消える「水晶特急」』

島田荘司 『消える「水晶特急」』 光文社文庫 島田荘司の『消える「水晶特急」』を読了しました。作者らしい大胆なトリックを駆使したミステリー作品で、読者を楽しませるだけの一定の水準に仕上げる力はさすがだなと思わされます。 【満足度】★★★☆☆

吉村達也『空中庭園殺人事件』

吉村達也 『空中庭園殺人事件』 光文社文庫 吉村達也の『空中庭園殺人事件』を読了しました。プロットにマンネリ化を防ぐための作者の工夫が見られます。ミステリーとして面白いかといわれると、純粋に首肯できないものがあるのですが。 【満足度】★★☆☆☆

吉村達也『「巨人―阪神」殺人事件』

吉村達也 『「巨人―阪神」殺人事件』 光文社文庫 吉村達也の『「巨人―阪神」殺人事件』を読了しました。ミステリーとして完成度の高い作者の作品を読むのは何だか久し振りのような気がするのですが、タイトルにも込められている本書のメタ的な設定がミステリ…