文学・会議

海外文学を中心に、読書の備忘録です。

日本文学

滝口悠生『ジミ・ヘンドリクス・エクスペリエンス』

滝口悠生 『ジミ・ヘンドリクス・エクスペリエンス』 新潮文庫 滝口悠生の『ジミ・ヘンドリクス・エクスペリエンス』を読了しました。滝口氏が芥川賞を受賞する前年に発表した作品で、著作としては三冊目にあたるのが本書です。まさに「体験」という他はない…

青木淳悟『匿名芸術家』

青木淳悟 『匿名芸術家』 講談社 青木淳悟の『匿名芸術家』を読了しました。「四十日と四十夜のメルヘン」で新潮新人賞を受賞してデビューした青木氏ですが、本作はその前日譚というか創作秘話のようなものを、いつもの如く奇妙な小説仕立てで描いてみせた作…

村上春樹『カンガルー日和』

村上春樹 『カンガルー日和』 講談社文庫 村上春樹の『カンガルー日和』を読了しました。初めて読んだのは高校生のときだったでしょうか、そのときには「図書館奇譚」や「あしか祭り」のような寓話性を含んだ作品が印象に残りましたが、今読み返してみると「…

池澤夏樹『スティル・ライフ』

池澤夏樹 『スティル・ライフ』 中公文庫 池澤夏樹の『スティル・ライフ』を読了しました。1988年に芥川賞を受賞した作品です。個人文学全集の編者として、また書評家としての池澤氏については知っているのですが、実際のところ小説を読むのは初めてのことで…

島本理生『リトル・バイ・リトル』

島本理生 『リトル・バイ・リトル』 講談社文庫 島本理生の『リトル・バイ・リトル』を読了しました。同時代の日本人作家の作品にももう少し触れておこうという意図をもって手に取った作品のひとつが本書です。家族や周囲の人々との係わり合いを、瑞々しく柔…

星新一『ようこそ地球さん』

星新一 『ようこそ地球さん』 新潮文庫 星新一(1926-1997)の『ようこそ地球さん』を読了しました。本書のあとがきによると、同じく新潮文庫に収められた『ボッコちゃん』が、単行本の『ようこそ地球さん』と『人造美人』からの自選短編といくつかの他の作…

大江健三郎『取り替え子』

大江健三郎 『取り替え子』 講談社文庫 大江健三郎の『取り替え子』を読了しました。もともと自身の私生活を文学的なモチーフを使って昇華しながら作品にしてきた大江氏ですが、本作の背景となっている俳優・映画監督の伊丹十三氏の自殺という出来事が、それ…

乗代雄介『本物の読書家』

乗代雄介 『本物の読書家』 講談社 乗代雄介の『本物の読書家』を読了しました。表題作である「本物の読書家」と「未熟な同感者」の二作が収録されています。縦横無尽に張り巡らされた古今東西の文学作品に関する言及や、ミステリー小説のように練られたプロ…

磯崎憲一郎『電車道』

磯崎憲一郎 『電車道』 新潮文庫 磯崎憲一郎の『電車道』を読了しました。文章も滑らかで引っかかることなく読むことができる物語ですが、約100年間に及ぶ私鉄電車の近代史を背景に、それぞれの人生を生きる幾人かの登場人物たちの姿は、どこか不思議な印象…

古川日出男『ルート350』

古川日出男 『ルート350』 講談社文庫 古川日出男の『ルート350』を読了しました。「物語」と表現しても良いし、本書における表現にならって「レプリカ」と読んでもいいわけですが、そこに立ち上がってくるものの助けを借りながら、あるいはそれに対して抗い…

吉本ばなな『うたかた/サンクチュアリ』

吉本ばなな 『うたかた/サンクチュアリ』 新潮文庫 吉本ばななの『うたかた/サンクチュアリ』を読了しました。吉本さんの本を手にとって読むのはこれが初めての経験になります。繊細な恋愛小説・家族小説なのですが、端的にいうと、もっと若い頃に出会うべ…

『大江健三郎自選短篇』

『大江健三郎自選短篇』 岩波文庫 『大江健三郎自選短篇』を読了しました。ほとんどの作品は再読なのですが、大江氏の処女作から90年代に発表された「後期」の作品まで、すべての収録作品に加筆修訂が施されているとのことで、本書の帯にあるようにまさに氏…

青木淳悟『男一代之改革』

青木淳悟 『男一代之改革』 河出書房新社 青木淳悟の『男一代之改革』を読了しました。本書の表題作は寛政の改革を為した松平定信を主人公とした歴史小説なのですが、青木氏の書く小説なので一筋縄ではいかない、どこかおかしなところを持っています。松平定…

安部公房『砂の女』

安部公房 『砂の女』 新潮文庫 安部公房(1924-1993)の『砂の女』を読了しました。1962年に発表された本書は、海外でも高く評価された作品です。読むのは高校時代以来のことでしょうか。昆虫採集のために砂丘へと出かけた男が、砂の底で女が一人暮らす家に…

島田荘司『盲剣楼奇譚』

島田荘司 『盲剣楼奇譚』 文藝春秋 島田荘司の『盲剣楼奇譚』を読了しました。島田氏の作品群の中にあっては、吉敷竹史を主人公とするシリーズの一作という位置づけになりますが、特にシリーズである必然性は感じられず、単発の作品として著されても良かった…

村上春樹『中国行きのスローボート』

村上春樹 『中国行きのスローボート』 中公文庫 村上春樹の『中国行きのスローボート』を読了しました。高校時代に古本屋で買って読んで以来、再読するのは何年ぶりのことでしょうか。全部で七編の短編が収められた村上春樹氏の初短編集です。 昔読んだとき…

北村薫『太宰治の辞書』

北村薫 『太宰治の辞書』 創元推理文庫 北村薫の『太宰治の辞書』を読了しました。円紫さんと《私》のシリーズ第六作目です。登場人物もすっかり歳を重ねていて、第一作で大学生だった《私》も、本作では出版社に勤めるベテラン編集者になっています。本をこ…

村上龍『海の向こうで戦争が始まる』

村上龍 『海の向こうで戦争が始まる』 講談社文庫 村上龍の『海の向こうで戦争が始まる』を読了しました。本書は村上龍の小説第二作目で、作者自身が本書の「あとがき」で、バーで出会ったリチャード・ブローティガンからの言葉として(この挿話自体がフィク…

筒井康隆『農協月へ行く』

筒井康隆 『農協月へ行く』 角川文庫 筒井康隆の『農協月へ行く』を読了しました。表題作のほか、「日本以外全部沈没」などの作品が収録されています。昔に読んだことがあるような、ないような、記憶が曖昧なのですが、エロ・グロ・風刺・タブーをものともし…

横山秀夫『ノースライト』

横山秀夫 『ノースライト』 新潮社 横山秀夫の『ノースライト』を読了しました。2012年に発表された『64』も久しぶりの作品となりましたが、今年発表された本作もそれから実に9年ぶりの作品となります。もっとも本作は2004年から2006年に一度雑誌連載されて…

大江健三郎『あいまいな日本の私』

大江健三郎 『あいまいな日本の私』 岩波新書 大江健三郎の『あいまいな日本の私』を読了しました。本書には1994年のノーベル文学賞受賞時の記念講演をはじめ、新聞社主催の医療フォーラム、コンサートホール、井伏鱒二さんを偲ぶ会など、全部で9編の講演が…

村上春樹・安西水丸『象工場のハッピーエンド』

村上春樹・安西水丸 『象工場のハッピーエンド』 新潮文庫 村上春樹=文・安西水丸=画の『象工場のハッピーエンド』を読了しました。高校時代に古本屋で買って読んだ記憶があるのですが、何となく再読したくなって書店で新品を購入して手に取ることになりま…

島田荘司『鳥居の密室 世界にただひとりのサンタクロース』

島田荘司 『鳥居の密室 世界にただひとりのサンタクロース』 新潮社 島田荘司の『鳥居の密室 世界にただひとりのサンタクロース』を読了しました。島田さんの小説作品はほとんど読んでいて、その文体も含めて好きな作家ではあるのですが、近年は会話の流れの…

本谷有希子『異類婚姻譚』

本谷有希子 『異類婚姻譚』 講談社 本谷有希子の『異類婚姻譚』を読了しました。第154回芥川賞受賞作である本書は「結婚」、そして「夫婦」というものに潜む違和感を題材としています。「夫婦は互いに似てくる」という、比較的多くの文脈においては美談のよ…

いとうせいこう『ノーライフキング』

いとうせいこう 『ノーライフキング』 河出文庫 いとうせいこう(1961-)の『ノーライフキング』を読了しました。本書が単行本として(新潮社から)最初に刊行されたのは1988年のこと。任天堂のファミリーコンピュータの発売が1983年のことなので、時系列と…

村田沙耶香『タダイマトビラ』

村田沙耶香 『タダイマトビラ』 新潮文庫 村田沙耶香の『タダイマトビラ』を読了しました。かつて三島賞の候補作になった頃から話題の本で、私もずっと気になってはいたのですが、これまで読まずにいた作品です。『コンビニ人間』で芥川賞を受賞し、新作も大…

青木淳悟『いい子は家で』

青木淳悟 『いい子は家で』 ちくま文庫 青木淳悟(1979-)の『いい子は家で』を読了しました。青木さんの作品を読むのは、デビュー作である『四十日と四十夜のメルヘン』、そして三島賞受賞作の『私のいない高校』に続いて、本作で三冊目になります。何とな…

赤川次郎『黒い森の記憶』

赤川次郎 『黒い森の記憶』 角川文庫 赤川次郎の『黒い森の記憶』を読了しました。北のほうにドライブしたときにふらっと立ち寄った古本屋で80円で購入。赤川さんの本は中学校の頃にかなりの数を読んだのですが、印象に残っていてずっと読み返したいと思って…

多和田葉子『尼僧とキューピッドの弓』

多和田葉子 『尼僧とキューピッドの弓』 講談社文庫 多和田葉子の『尼僧とキューピッドの弓』を読了しました。日本語とドイツ語の両方で作品を発表している多和田さんの作品を読むのは今回が初めてのことになります。作品の舞台はドイツの田舎町にある尼僧修…

島田荘司『嘘でもいいから誘拐事件』

島田荘司 『嘘でもいいから誘拐事件』 集英社文庫 島田荘司の『嘘でもいいから誘拐事件』を読了しました。有名な御手洗潔シリーズや吉敷竹史シリーズではないのですが、これも島田氏のシリーズもののひとつです。とはいえシリーズものとはいっても、私の知る…