文学・会議

海外文学を中心に、読書の備忘録です。

英米文学

イアン・マキューアン『夢みるピーターの七つの冒険』

イアン・マキューアン 真野泰訳 『夢みるピーターの七つの冒険』 中央公論新社 イアン・マキューアン(1948-)の『夢みるピーターの七つの冒険』を読了しました。マキューアンが書いた児童書ですが、マキューアンらしく一筋縄ではいかないところもあって、大…

カーソン・マッカラーズ『心は孤独な狩人』

カーソン・マッカラーズ 村上春樹訳 『心は孤独な狩人』 新潮社 カーソン・マッカラーズ(1917-1967)の『心は孤独な狩人』を読了しました。1940年に作者が23歳の若さで発表した本書が、当時のアメリカの社会において驚きをもって迎えられたということは容易…

ディケンズ『クリスマス・キャロル』

ディケンズ 池央耿 『クリスマス・キャロル』 光文社古典新訳文庫 ディケンズ(1812-1870)の『クリスマス・キャロル』を読了しました。随分と昔に読んだのは新潮文庫の翻訳で、古めかしい装丁が懐かしく思い出されるのですが、21世紀になってからの新訳で、…

ジャック・リッチー『クライム・マシン』

ジャック・リッチー 好野理恵訳 『クライム・マシン』 河出文庫 ジャック・リッチー(1922-1983)の『クライム・マシン』を読了しました。短篇ミステリの名手という呼び名に違わない優れた短篇ミステリーが多数収録された作品集です。巻頭に掲げられた表題作…

ジェイン・オーステイン『高慢と偏見』

ジェイン・オーステイン 中野康司訳 『高慢と偏見』 ちくま文庫 ジェイン・オーステイン(1775-1817)の『高慢と偏見』を読了しました。以前に岩波文庫の翻訳で読んだのは学生時代のことなので、今回はかなり久し振りの読み直しととなりました。本書は近代イ…

ウラジーミル・ナボコフ『ナボコフ全短篇』

ウラジーミル・ナボコフ 秋草俊一郎・諫早勇一・貝澤哉・加藤光也・杉本一直・沼野充義・毛利公美・若島正 訳 『ナボコフ全短篇』 作品社 ウラジーミル・ナボコフ(1899-1977)の『ナボコフ全短篇』を読了しました。生前に発表された作品、また死後に公刊さ…

シェイクスピア『ヴェニスの商人』

シェイクスピア 福田恆存訳 『ヴェニスの商人』 新潮文庫 シェイクスピア(1564-1616)の『ヴェニスの商人』を読了しました。岩波文庫、白水Uブックス、ちくま文庫のそれぞれの訳で読んだ作品で、言わずと知れた喜劇の傑作なのですが、今回の読書で印象に残…

デイヴィッド・マークソン『ウィトゲンシュタインの愛人』

デイヴィッド・マークソン 木原善彦訳 『ウィトゲンシュタインの愛人』 国書刊行会 デイヴィッド・マークソン(1927-2010)の『ウィトゲンシュタインの愛人』を読了しました。本書の帯にある「煽り文」には〈アメリカ実験小説の最高到達点〉と書かれていて、…

シェイクスピア『ハムレット』

シェイクスピア 福田恆存訳 『ハムレット』 新潮文庫 シェイクスピア(1564-1616)の『ハムレット』を読了しました。今回は新潮文庫の福田恆存氏の訳での再読となります。主人公であるハムレットの言動のいかにも謎めいた部分というか、どうにも解釈しきれな…

マイクル・コナリー『潔白の法則』

マイクル・コナリー 古沢嘉通訳 『潔白の法則』 講談社文庫 マイクル・コナリーの『潔白の法則』を読了しました。「リンカーン弁護士」ミッキー・ハラーを主人公に据えた作品の第六弾です。主人公が陥っている窮地とタイトルに込められた矜持と、そしてそれ…

ジョージ・ソーンダーズ『短くて恐ろしいフィルの時代』

ジョージ・ソーンダーズ 岸本佐知子訳 『短くて恐ろしいフィルの時代』 河出文庫 ジョージ・ソーンダーズ(1958-)の『短くて恐ろしいフィルの時代』を読了しました。ブッカー賞作家であるソーンダーズの作品を読むのは本書で三冊目となります。タイトルにも…

スティーヴン・ハンター『極大射程』

スティーヴン・ハンター 佐藤和彦訳 『極大射程』 新潮文庫 スティーヴン・ハンターの『極大射程』を読了しました。冒険小説の有名作品なのですが読むのは今回が初めてのことで、映画化された作品についても未視聴です。銃に関する偏執的な愛着を描いている…

フィッツジェラルド『若者はみな悲しい』

フィッツジェラルド 小川高義訳 『若者はみな悲しい』 光文社古典新訳文庫 フィッツジェラルド(1896-1940)の『若者はみな悲しい』を読了しました。短編集はどうしても「傑作選」ということになりがちなフィッツジェラルドのオリジナルな短編集を読むことが…

ラルフ・エリスン『見えない人間』

ラルフ・エリスン 松本昇訳 『見えない人間』 白水Uブックス ラルフ・エリスン(1914-1994)の『見えない人間』を読了しました。「全米図書賞を受賞した黒人文学の金字塔」というと、作品に対するいささかステレオタイプなイメージを生んでしまいそうですが…

ウィリアム・シェイクスピア『ヘンリー六世 第一部』

ウィリアム・シェイクスピア 小田島雄志訳 『ヘンリー六世 第一部』 白水Uブックス ウィリアム・シェイクスピア(1564-1616)の『ヘンリー六世 第一部』を読了しました。「第一部」とありますが、本書の解説によれば、「第二部」や「第三部」よりも前に書か…

アーサー・ミラー『セールスマンの死』

アーサー・ミラー 倉橋健訳 『セールスマンの死』 ハヤカワ演劇文庫 アーサー・ミラー(1915-2005)の『セールスマンの死』を読了しました。本書はアーサー・ミラーの代表的な戯曲作品でピュリッツァー賞受賞作です。作者の作品を読むのは私にとって初めての…

ダシール・ハメット『マルタの鷹』

ダシール・ハメット 小鷹信光訳 『マルタの鷹』 ハヤカワ文庫 ダシール・ハメット(1894-1961)の『マルタの鷹』を読了しました。私立探偵サム・スペードを主人公とするハードボイルド小説の古典作品です。プロットが面白いかといわれると首をかしげてしまう…

コーマック・マッカーシー『果樹園の守り手』

コーマック・マッカーシー 山口和彦訳 『果樹園の守り手』 春風社 コーマック・マッカーシー(1933-)の『果樹園の守り手』を読了しました。本書は1965年に発表されたマッカーシーのデビュー作品です。寡作で知られる作者が発表した小説は全部で12作品のよう…

スティーヴン・キング『ペット・セマタリー』

スティーヴン・キング 深町眞理子訳 『ペット・セマタリー』 文春文庫 スティーヴン・キング(1947-)の『ペット・セマタリー』を読了しました。キング初期の有名ホラー作品ということもあって、物語の基本的な設定については聞いたことがあったのですが、小…

バーナード・マラマッド『テナント』

バーナード・マラマッド 青山南訳 『テナント』 みすず書房 バーナード・マラマッド(1914-1986)の『テナント』を読了しました。それほど数の多くない作者の長篇小説のうち、本書はこれが初邦訳となるようです。とはいえ、その他の長篇小説の翻訳のうち多く…

ヒラリー・マンテル『ウルフ・ホール』

ヒラリー・マンテル 宇佐川晶子訳 『ウルフ・ホール』 早川書房 ヒラリー・マンテル(1952-)の『ウルフ・ホール』を読了しました。ブッカー賞受賞作品である本書は、イギリスの政治家でありヘンリー8世に仕えたトマス・クロムウェルを主人公とする歴史小説…

マイクル・コナリー『警告』

マイクル・コナリー 古沢嘉通訳 『警告』 講談社文庫 マイクル・コナリーの『警告』を読了しました。作者のシリーズ作品の中では地味な部類に入ると思うのですが、ジャーナリストであるジャック・マカヴォイを主人公とする作品です。ジャーナリストという自…

『対訳 ジョン・ダン詩集―イギリス詩人選(2)』

湯浅信之訳 『対訳 ジョン・ダン詩集―イギリス詩人選(2)』 岩波文庫 『対訳 ジョン・ダン詩集―イギリス詩人選(2)』を読了しました。本書を読むまで、ジョン・ダン(1572-1631)という詩人のことはまったく知らなかったのですが、後世において形而上詩人…

ジェイムズ・サーバー『虹をつかむ男』

ジェイムズ・サーバー 鳴海四郎訳 『虹をつかむ男』 ハヤカワ文庫 ジェイムズ・サーバー(1894-1961)の『虹をつかむ男』を読了しました。雑誌『ニューヨーカー』の編集者として活躍し、自身も作家・漫画家として多数の作品を寄稿したジェームズ・サーバーの…

グレイス・ペイリー『その日の後刻に』

グレイス・ペイリー 村上春樹訳 『その日の後刻に』 文春文庫 グレイス・ペイリー(1922-2007)の『その日の後刻に』を読了しました。生涯で三冊の作品集しか残していない作者の最後の作品集で、巻末にはエッセイやインタビューも収録されています。骨太の小…

J・アップダイク『さようならウサギ』

J・アップダイク 井上謙治訳 『さようならウサギ』 新潮社 J・アップダイク(1932-2009)の『さようならウサギ』を読了しました。「ウサギ」ことハリー・アングストロームの人生を綴った大河小説の掉尾を飾る作品です。作者自身が(途中から「メガノベル」と…

マイクル・コナリー『鬼火』

マイクル・コナリー 古沢嘉通訳 『鬼火』 講談社文庫 マイクル・コナリーの『鬼火』を読了しました。最近のハリー・ボッシュシリーズは、読み終わった後にプロットを思い出そうとしても、まったく思い出すことができないようになってしまったのですが、それ…

アガサ・クリステイー『死人の鏡』

アガサ・クリステイー 小倉多加志訳 『死人の鏡』 ハヤカワ文庫 アガサ・クリステイー(1890-1976)の『死人の鏡』を読了しました。名探偵ポアロを探偵役とする四つの短編作品が収録されています。英語の原題を見るに、本書の表題作とは異なる「厩舎街の殺人…

スティーヴン・クレイン『勇気の赤い勲章』

スティーヴン・クレイン 藤井光訳 『勇気の赤い勲章』 光文社古典新訳文庫 スティーヴン・クレイン(1871-1900)の『勇気の赤い勲章』を読了しました。19世紀末の時代にあまりに短い生涯を生きたクレインの代表作で、南北戦争を題材に描かれた「戦争小説」で…

レイチェル・クシュナー『終身刑の女』

レイチェル・クシュナー 池田真紀子訳 『終身刑の女』 小学館文庫 レイチェル・クシュナーの『終身刑の女』を読了しました。ブッカー賞最終候補作という触れ込みもあって手に取ることとなりましたが、どちらかというとエンターテインメント系の作品を出して…