文学・会議

海外文学を中心に、読書の備忘録です。

英米文学

ジェイムズ・ディッキー『救い出される』

ジェイムズ・ディッキー 酒本雅之訳 『救い出される』 新潮文庫 ジェイムズ・ディッキー(1923-1997)の『救い出される』を読了しました。村上柴田翻訳堂の企画で復刊された一冊です。原題は“Deliverance”で1971年に日本で翻訳出版されたときには『わが心の…

W・サローヤン『パパ・ユーア クレイジー』

W・サローヤン 伊丹十三訳 『パパ・ユーア クレイジー』 新潮文庫 W・サローヤン(1908-1981)の『パパ・ユーア クレイジー』を読了しました。本書は昭和63年発行の新潮文庫で、ピンク色の背表紙に懐かしさを覚えます。「今月の新刊」と書かれた帯には「想像…

J・M・クッツェー『サマータイム、青年時代、少年時代 ―辺境からの三つの〈自伝〉』

J・M・クッツェー くぼたのぞみ訳 『サマータイム、青年時代、少年時代 ―辺境からの三つの〈自伝〉』 インスクリプト J・M・クッツェーの『サマータイム、青年時代、少年時代 ―辺境からの三つの〈自伝〉』を読了しました。もともとは『少年時代』、『青年時…

フォークナー『アブサロム、アブサロム!』

フォークナー 藤平育子訳 『アブサロム、アブサロム!』 岩波文庫 フォークナー(1897-1962)の『アブサロム、アブサロム!』を読了しました。解説によれば、フォークナーは本書が完成したときに「アメリカ人によってそれまでに書かれた中で最高の小説だと思…

アンソニー・ドーア『すべての見えない光』

アンソニー・ドーア 藤井光訳 『すべての見えない光』 新潮社 アンソニー・ドーアの『すべての見えない光』を読了しました。ピュリッツァー賞受賞作品で、日本では「Twitter文学賞」も受賞している本書ですが、長いこと本棚に読まれないままに置かれていて、…

ロバート・L・スティーブンソン『宝島』

ロバート・L・スティーブンソン 鈴木恵訳 『宝島』 新潮文庫 ロバート・L・スティーブンソン(1850-1894)の『宝島』を読了しました。『ジキルとハイド』の著者としてよく知られているスティーブンソンですが、本書『宝島』もつとに有名な作品です。とはいえ…

モーム『ジゴロとジゴレット モーム傑作選』

サマセット・モーム 金原端人訳 『ジゴロとジゴレット モーム傑作選』 新潮文庫 サマセット・モーム(1874-1965)の『ジゴロとジゴレット モーム傑作選』を読了しました。訳者あとがきによるとモーパッサンをお手本にしたというモームの短編集ですが、本書に…

トマス・ピンチョン『スロー・ラーナー』

トマス・ピンチョン 佐藤良明訳 『スロー・ラーナー』 新潮社 トマス・ピンチョンの『スロー・ラーナー』を読了しました。寡作の覆面作家ピンチョンがこれまでに発表した唯一の短編集です。「思い出せる限りでいうと」と煙に巻く言葉を枕詞にしながらも、本…

レイモンド・カーヴァー『必要になったら電話をかけて』

レイモンド・カーヴァー 村上春樹訳 『必要になったら電話をかけて』 中央公論新社 レイモンド・カーヴァー(1938-1988)の『必要になったら電話をかけて』を読了しました。読み進めてきたカーヴァー全集も本書で八巻目、完結となりました。本書にはカーヴァ…

『ニューヨーカー短編集 Ⅰ』

常盤新平他訳 『ニューヨーカー短編集 Ⅰ』 早川書房 『ニューヨーカー短編集 Ⅰ』を読了しました。非常におもしろく読むことができた『ベスト・ストーリーズ』の本家ともいえるのが、同じく早川書房から1969年に出版されていた本書です。近所の古本屋で捨て値…

『エドマンド・ウィルソン批評集2 文学』

中村紘一・佐々木徹・若島正訳 『エドマンド・ウィルソン批評集2 文学』 みすず書房 『エドマンド・ウィルソン批評集2 文学』を読了しました。本書に収録された「ヘンリー・ジェイムズの曖昧性」は、ヘンリー・ジェイムズの『ねじの回転』を対象として家庭教…

J・アップダイク『帰ってきたウサギ』

J・アップダイク 井上謙治訳 『帰ってきたウサギ』 新潮社 J・アップダイク(1932-2009)の『帰ってきたウサギ』を読了しました。高校時代はバスケットボールの花形選手だった「ウサギ」ことハリー・アングストロームは、前作『走れウサギ』から10歳年をとっ…

『エドマンド・ウィルソン批評集1 社会・文明』

中村紘一・佐々木徹訳 『エドマンド・ウィルソン批評集1 社会・文明』みすず書房 『エドマンド・ウィルソン批評集1 社会・文明』を読了しました。エドマンド・ウィルソン(1895-1972)は20世紀を代表するアメリカの文芸批評家です。本作はジャーナリストの視…

ジャック・ロンドン『白い牙』

ジャック・ロンドン 白石佑光訳 『白い牙』 新潮文庫 ジャック・ロンドン(1876-1916)の『白い牙』を読了しました。ホワイト・ファングと呼ばれるオオカミの姿を描いた「動物小説」です。乾いた文体は野生の血が知らせる「掟」の存在をうまく描けていると思…

ジュリー・オオツカ『屋根裏の仏さま』

ジュリー・オオツカ 岩本正恵 小竹由美子 訳 『屋根裏の仏さま』 新潮社 ジュリー・オオツカの『屋根裏の仏さま』を読了しました。一人称複数の「わたしたち」の語りが独特で、そこから醸し出される「ひとつの声」の存在が、歴史や物語を紡ぐための装置とし…

ヴァージニア・ウルフ『壁のしみ』

ヴァージニア・ウルフ 川本静子訳 『壁のしみ 短編集』 みすず書房 ヴァージニア・ウルフ(1882-1941)の『壁のしみ』を読了しました。「ヴァージニア・ウルフ コレクション」を読むのは本書で四冊目になります。15の短編が収録されており、それらが発表年代…

コルム・トビーン『マリアが語り遺したこと』

コルム・トビーン 栩木伸明訳 『マリアが語り遺したこと』 新潮社 コルム・トビーン(1955-)の『マリアが語り遺したこと』を読了しました。著者はアイルランド出身のジャーナリスト・作家で、現在ではアメリカの大学で創作を教えているそうです。本書は中編…

イアン・マキューアン『甘美なる作戦』

イアン・マキューアン 村松潔訳 『甘美なる作戦』 新潮社 イアン・マキューアン(1948-)の『甘美なる作戦』を読了しました。原題は“Sweet Tooth”で直訳すれば「甘い歯」ですが、「甘党」というような意味で使われるようです。イギリスの情報機関「MI5」を舞…

カズオ・イシグロ『充たされざる者』

カズオ・イシグロ 古賀林幸訳 『充たされざる者』 ハヤカワ文庫 カズオ・イシグロ(1954-)の『充たされざる者』を読了しました。本書は彼の長編第四作目にあたる作品で、彼が現在までに発表している長編小説で未読だったのは本書だけです。『日の名残り』に…

ポール・オースター、J・M・クッツェー『ヒア・アンド・ナウ 往復書簡 2008-2011』

ポール・オースター、J・M・クッツェー くぼたのぞみ・山崎暁子訳 『ヒア・アンド・ナウ 往復書簡 2008-2011』 岩波書店 ポール・オースターとJ・M・クッツェーの間で取り交わされた書簡集である『ヒア・アンド・ナウ 往復書簡 2008-2011』を読了しました。…

ドン・デリーロ『ポイント・オメガ』

ドン・デリーロ 都甲幸治訳 『ポイント・オメガ』 水声社 ドン・デリーロ(1936-)の『ポイント・オメガ』を読了しました。本文にして150ページ足らずの中編作品で、美術館(ニューヨーク近代美術館なのでしょう)とカリフォルニア州サンディエゴの砂漠とい…

ジュンパ・ラヒリ『低地』

ジュンパ・ラヒリ 小川高義訳 『低地』 新潮社 ジュンパ・ラヒリ(1967-)の『低地』を読了しました。インド・カルカッタ出身の両親のもとで生まれてアメリカで生まれ育ったラヒリが、「故郷」であるカルカッタ出身の兄弟をめぐる人生模様を描いた長編作品で…

マキシーン・ホン・キングストン『チャイナ・メン』

マキシーン・ホン・キングストン 藤本和子訳 『チャイナ・メン』 新潮文庫 マキシーン・ホン・キングストン(1940-)の『チャイナ・メン』を読了しました。本書は「村上柴田翻訳堂」の一冊として、1983年に晶文社より出版された翻訳を改題の上、刊行されたも…

ポール・オースター『消失 ポール・オースター詩集』

ポール・オースター 飯野友幸訳 『消失 ポール・オースター詩集』 思潮社 『消失 ポール・オースター詩集』を読了しました。彼が小説を書き始める以前の時期に著されたという詩群の選集です。象徴的な言葉でもって生の倦怠とその中で生まれる煌めきを捉えよ…

『フィッツジェラルド短編集』

佐伯泰樹編訳 『フィッツジェラルド短編集』 岩波文庫 『フィッツジェラルド短編集』を読了しました。F・スコット・フィッツジェラルド(1896-1940)の短い生涯のうちに書かれた短編作品の中から、本書は訳者あとがきによると「短編集の決定版を編むつもりで…

アーウィン・ショー『夏服を着た女たち』

アーウィン・ショー 常盤新平訳 『夏服を着た女たち』 講談社文庫 アーウィン・ショー(1913-1984)の『夏服を着た女たち』を読了しました。本作の邦訳が講談社から出版されたのは1979年のことで、私の手元にある講談社文庫の初版はその5年である1984年に出…

J・M・クッツェー『遅い男』

J・M・クッツェー 鴻巣友季子訳 『遅い男』 早川書房 J・M・クッツェー(1940-)の『遅い男』を読了しました。これまでどの作品を読んでも面白く感動できた作家というのは数少ないのですが、クッツェーは私にとってそんな稀有な作家のひとりです。本書は2003…

レイモンド・カーヴァー『英雄を謳うまい』

レイモンド・カーヴァー 村上春樹訳 『英雄を謳うまい』 中央公論新社 レイモンド・カーヴァー(1938-1988)の『英雄を謳うまい』を読了しました。読み進めてきたカーヴァー全集も本書で七巻目を迎えました。初期の習作的な色合いの強い短編や詩、評論などが…

チャールズ・ディケンズ『オリヴァー・ツイスト』

チャールズ・ディケンズ 加賀山卓朗訳 『オリヴァー・ツイスト』 新潮文庫 チャールズ・ディケンズ(1812-1870)の『オリヴァー・ツイスト』を読了しました。新潮文庫の新訳でディケンズを読むのは、『二都物語』に続いて二冊目です。本作は文豪ディケンズの…

J・G・バラード『ハイ・ライズ』

J・G・バラード 村上博基訳 『ハイ・ライズ』 創元SF文庫 J・G・バラード(1930-2009)の『ハイ・ライズ』を読了しました。上海に生まれたイギリスの作家バラードは「人間が探求しなければならないのは、アウタースペースではなく、インナースペースだ」とし…