文学・会議

海外文学を中心に、読書の備忘録です。

英米文学

『エドマンド・ウィルソン批評集2 文学』

中村紘一・佐々木徹・若島正訳 『エドマンド・ウィルソン批評集2 文学』 みすず書房 『エドマンド・ウィルソン批評集2 文学』を読了しました。本書に収録された「ヘンリー・ジェイムズの曖昧性」は、ヘンリー・ジェイムズの『ねじの回転』を対象として家庭教…

J・アップダイク『帰ってきたウサギ』

J・アップダイク 井上謙治訳 『帰ってきたウサギ』 新潮社 J・アップダイク(1932-2009)の『帰ってきたウサギ』を読了しました。高校時代はバスケットボールの花形選手だった「ウサギ」ことハリー・アングストロームは、前作『走れウサギ』から10歳年をとっ…

『エドマンド・ウィルソン批評集1 社会・文明』

中村紘一・佐々木徹訳 『エドマンド・ウィルソン批評集1 社会・文明』みすず書房 『エドマンド・ウィルソン批評集1 社会・文明』を読了しました。エドマンド・ウィルソン(1895-1972)は20世紀を代表するアメリカの文芸批評家です。本作はジャーナリストの視…

ジャック・ロンドン『白い牙』

ジャック・ロンドン 白石佑光訳 『白い牙』 新潮文庫 ジャック・ロンドン(1876-1916)の『白い牙』を読了しました。ホワイト・ファングと呼ばれるオオカミの姿を描いた「動物小説」です。乾いた文体は野生の血が知らせる「掟」の存在をうまく描けていると思…

ジュリー・オオツカ『屋根裏の仏さま』

ジュリー・オオツカ 岩本正恵 小竹由美子 訳 『屋根裏の仏さま』 新潮社 ジュリー・オオツカの『屋根裏の仏さま』を読了しました。一人称複数の「わたしたち」の語りが独特で、そこから醸し出される「ひとつの声」の存在が、歴史や物語を紡ぐための装置とし…

ヴァージニア・ウルフ『壁のしみ』

ヴァージニア・ウルフ 川本静子訳 『壁のしみ 短編集』 みすず書房 ヴァージニア・ウルフ(1882-1941)の『壁のしみ』を読了しました。「ヴァージニア・ウルフ コレクション」を読むのは本書で四冊目になります。15の短編が収録されており、それらが発表年代…

コルム・トビーン『マリアが語り遺したこと』

コルム・トビーン 栩木伸明訳 『マリアが語り遺したこと』 新潮社 コルム・トビーン(1955-)の『マリアが語り遺したこと』を読了しました。著者はアイルランド出身のジャーナリスト・作家で、現在ではアメリカの大学で創作を教えているそうです。本書は中編…

イアン・マキューアン『甘美なる作戦』

イアン・マキューアン 村松潔訳 『甘美なる作戦』 新潮社 イアン・マキューアン(1948-)の『甘美なる作戦』を読了しました。原題は“Sweet Tooth”で直訳すれば「甘い歯」ですが、「甘党」というような意味で使われるようです。イギリスの情報機関「MI5」を舞…

カズオ・イシグロ『充たされざる者』

カズオ・イシグロ 古賀林幸訳 『充たされざる者』 ハヤカワ文庫 カズオ・イシグロ(1954-)の『充たされざる者』を読了しました。本書は彼の長編第四作目にあたる作品で、彼が現在までに発表している長編小説で未読だったのは本書だけです。『日の名残り』に…

ポール・オースター、J・M・クッツェー『ヒア・アンド・ナウ 往復書簡 2008-2011』

ポール・オースター、J・M・クッツェー くぼたのぞみ・山崎暁子訳 『ヒア・アンド・ナウ 往復書簡 2008-2011』 岩波書店 ポール・オースターとJ・M・クッツェーの間で取り交わされた書簡集である『ヒア・アンド・ナウ 往復書簡 2008-2011』を読了しました。…

ドン・デリーロ『ポイント・オメガ』

ドン・デリーロ 都甲幸治訳 『ポイント・オメガ』 水声社 ドン・デリーロ(1936-)の『ポイント・オメガ』を読了しました。本文にして150ページ足らずの中編作品で、美術館(ニューヨーク近代美術館なのでしょう)とカリフォルニア州サンディエゴの砂漠とい…

ジュンパ・ラヒリ『低地』

ジュンパ・ラヒリ 小川高義訳 『低地』 新潮社 ジュンパ・ラヒリ(1967-)の『低地』を読了しました。インド・カルカッタ出身の両親のもとで生まれてアメリカで生まれ育ったラヒリが、「故郷」であるカルカッタ出身の兄弟をめぐる人生模様を描いた長編作品で…

マキシーン・ホン・キングストン『チャイナ・メン』

マキシーン・ホン・キングストン 藤本和子訳 『チャイナ・メン』 新潮文庫 マキシーン・ホン・キングストン(1940-)の『チャイナ・メン』を読了しました。本書は「村上柴田翻訳堂」の一冊として、1983年に晶文社より出版された翻訳を改題の上、刊行されたも…

ポール・オースター『消失 ポール・オースター詩集』

ポール・オースター 飯野友幸訳 『消失 ポール・オースター詩集』 思潮社 『消失 ポール・オースター詩集』を読了しました。彼が小説を書き始める以前の時期に著されたという詩群の選集です。象徴的な言葉でもって生の倦怠とその中で生まれる煌めきを捉えよ…

『フィッツジェラルド短編集』

佐伯泰樹編訳 『フィッツジェラルド短編集』 岩波文庫 『フィッツジェラルド短編集』を読了しました。F・スコット・フィッツジェラルド(1896-1940)の短い生涯のうちに書かれた短編作品の中から、本書は訳者あとがきによると「短編集の決定版を編むつもりで…

アーウィン・ショー『夏服を着た女たち』

アーウィン・ショー 常盤新平訳 『夏服を着た女たち』 講談社文庫 アーウィン・ショー(1913-1984)の『夏服を着た女たち』を読了しました。本作の邦訳が講談社から出版されたのは1979年のことで、私の手元にある講談社文庫の初版はその5年である1984年に出…

J・M・クッツェー『遅い男』

J・M・クッツェー 鴻巣友季子訳 『遅い男』 早川書房 J・M・クッツェー(1940-)の『遅い男』を読了しました。これまでどの作品を読んでも面白く感動できた作家というのは数少ないのですが、クッツェーは私にとってそんな稀有な作家のひとりです。本書は2003…

レイモンド・カーヴァー『英雄を謳うまい』

レイモンド・カーヴァー 村上春樹訳 『英雄を謳うまい』 中央公論新社 レイモンド・カーヴァー(1938-1988)の『英雄を謳うまい』を読了しました。読み進めてきたカーヴァー全集も本書で七巻目を迎えました。初期の習作的な色合いの強い短編や詩、評論などが…

チャールズ・ディケンズ『オリヴァー・ツイスト』

チャールズ・ディケンズ 加賀山卓朗訳 『オリヴァー・ツイスト』 新潮文庫 チャールズ・ディケンズ(1812-1870)の『オリヴァー・ツイスト』を読了しました。新潮文庫の新訳でディケンズを読むのは、『二都物語』に続いて二冊目です。本作は文豪ディケンズの…

J・G・バラード『ハイ・ライズ』

J・G・バラード 村上博基訳 『ハイ・ライズ』 創元SF文庫 J・G・バラード(1930-2009)の『ハイ・ライズ』を読了しました。上海に生まれたイギリスの作家バラードは「人間が探求しなければならないのは、アウタースペースではなく、インナースペースだ」とし…

レイモンド・カーヴァー『象/滝への新しい小径』

レイモンド・カーヴァー 村上春樹訳 『象/滝への新しい小径』 中央公論新社 レイモンド・カーヴァー(1938-1988)の『象/滝への新しい小径』を読了しました。本書はカーヴァー全集の第六巻で、カーヴァーの死の間際、晩年に著されたいくつかの短編と詩から…

シェイクスピア『ハムレット』

シェイクスピア 松岡和子訳 『ハムレット』 ちくま文庫 ちくま文庫に収められたシェイクスピア全集Ⅰ『ハムレット』を読了しました。『ハムレット』を読むのは新旧の岩波文庫の翻訳に続いて三回目になります。読みやすい翻訳だと感じました。 シェイクスピア…

ヴァージニア・ウルフ『ダロウェイ夫人』

ヴァージニア・ウルフ 近藤いね子訳 『ダロウェイ夫人』 みすず書房 ヴァージニア・ウルフ(1882-1941)の『ダロウェイ夫人』を読了しました。この本は大学時代にたしか角川文庫の翻訳で読んで、まったく入り込むことができずに読書が終わって、ヴァージニア…

ポオ『黄金虫・アッシャー家の崩壊 他九編』

ポオ 八木敏雄訳 『黄金虫・アッシャー家の崩壊 他九編』 岩波文庫 エドガー・アラン・ポオ(1809-1849)の『黄金虫・アッシャー家の崩壊 他九編』を読了しました。本書にはアメリカの詩人・作家であるポオの初期の作品をはじめとする短編小説が収録されてい…

コリン・ウィルソン『宇宙ヴァンパイアー』

コリン・ウィルソン 中村保男訳 『宇宙ヴァンパイアー』 新潮文庫 コリン・ウィルソン(1931-2013)の『宇宙ヴァンパイアー』を読了しました。新潮文庫の「村上柴田翻訳堂」シリーズの一冊として復刊されたもので、元本は1977年の刊行です。今回の復刊セレク…

J・アーヴィング『未亡人の一年』

J・アーヴィング 都甲幸治・中川千帆訳 『未亡人の一年』 新潮文庫 J・アーヴィング(1942-)の『未亡人の一年』を読了しました。本書は『サーカスの息子』の次に発表されたアーヴィングの長編作品で、文庫本でも500ページ超えの二巻本と相変わらずの長大さ…

カズオ・イシグロ『浮世の画家』

カズオ・イシグロ 飛田茂雄訳 『浮世の画家』 ハヤカワ文庫 カズオ・イシグロ(1954-)の『浮世の画家』を読了しました。学生時代に中公文庫で読んでいたのですが、ハヤカワ文庫での読み直しとなりました。『日の名残り』と同じように、特に再編集はなくまっ…

ジョージ・ソーンダーズ『リンカーンとさまよえる霊魂たち』

ジョージ・ソーンダーズ 上岡伸雄訳 『リンカーンとさまよえる霊魂たち』 河出書房新社 ジョージ・ソーンダーズ(1958-)の『リンカーンとさまよえる霊魂たち』を読了しました。本書は2017年のブッカー賞受賞作で、かなり話題になった本です。帯には「全米ベ…

セス・フリード『大いなる不満』

セス・フリード 藤井光訳 『大いなる不満』 新潮社 セス・フリードの『大いなる不満』を読了しました。1983年生まれという若いアメリカの才能による短編集です。寓話的な筋立てから浮かび上がる人間の欲望に魅せられます。一気に読まされてしまいました。 【…

カート・ヴォネガット『青ひげ』

カート・ヴォネガット 浅倉久志訳 『青ひげ』 ハヤカワ文庫 カート・ヴォネガット(1922-2007)の『青ひげ』を読了しました。初期の長編作品は大学時代に続けて読んだことがあって、『タイタンの妖女』にはいたく感動させられたのを覚えているのですが、ヴォ…