文学・会議

海外文学を中心に、読書の備忘録です。

英米文学

F・スコット・フィッツジェラルド『美しく呪われた人たち』

F・スコット・フィッツジェラルド 上岡伸雄訳 『美しく呪われた人たち』 作品社 F・スコット・フィッツジェラルド(1896-1940)の『美しく呪われた人たち』を読了しました。本書が発表されたのは『グレート・ギャツビー』が世に出る3年前の1922年のことで、…

ジェイン・オースティン『マンスフィールド・パーク』

ジェイン・オースティン 中野康司訳 『マンスフィールド・パーク』 ちくま文庫 ジェイン・オースティン(1775-1817)の『マンスフィールド・パーク』を読了しました。19世紀初めに活躍し近代イギリス小説のひとつのピークをなしたオースティンの作品群につい…

マラマッド『マラマッド短編集』

マラマッド 加島祥造訳 『マラマッド短編集』 新潮文庫 バーナード・マラマッド(1914-1986)の『マラマッド短編集』を読了しました。本書は1971年に新潮文庫から刊行されたもので『マラマッド短編集』という邦題が付せられていますが、独自編集された作品集…

コルソン・ホワイトヘッド『地下鉄道』

コルソン・ホワイトヘッド 谷崎由依訳 『地下鉄道』 ハヤカワ文庫 コルソン・ホワイトヘッド(1969-)の『地下鉄道』を読了しました。2016年に刊行され、ピュリッツァー賞、全米図書賞をはじめとする数々の文学賞を受賞した話題の作品である本書は、作者にと…

J・ケルアック『孤独な旅人』

J・ケルアック『孤独な旅人』 J・ケルアック(1922-1969)の『孤独な旅人』を読了しました。本書は1960年に発表された作品で、原題は“The Lonesome Traveller”です。アメリカ、メキシコ、そしてヨーロッパを巡るケルアックの放浪の物語、そして鉄道や山火事…

イーヴィリン・ウォー『回想のブライズヘッド』

イーヴィリン・ウォー 小野寺健訳 『回想のブライズヘッド』 岩波文庫 イーヴィリン・ウォー(1903-1966)の『回想のブライズヘッド』を読了しました。原題は“Brideshead Revisited”で、文字通りに訳すと「ブライズヘッド再訪」となります。そのタイトルが表…

ジェフリー・ディーヴァー『スキン・コレクター』

ジェフリー・ディーヴァー 池田真紀子訳 『スキン・コレクター』 文春文庫 ジェフリー・ディーヴァーの『スキン・コレクター』を読了しました。科学捜査のスペシャリストであるリンカーン・ライムを主人公とするミステリーシリーズの一作です。ページターナ…

タナハシ・コーツ『世界と僕のあいだに』

タナハシ・コーツ 池田年穂訳 『世界と僕のあいだに』 慶應義塾大学出版会 タナハシ・コーツの『世界と僕のあいだに』を読了しました。最近では小説作品も邦訳されましたが、ジャーナリストであり2016年の『タイム』誌が発表する「世界で最も影響力のある100…

ジョナサン・フランゼン『コレクションズ』

ジョナサン・フランゼン 黒原敏行訳 『コレクションズ』 ハヤカワ文庫 ジョナサン・フランゼン(1959-)の『コレクションズ』を読了しました。2001年に発表されたフランゼンの第三作目の小説である本書は全米図書賞受賞作となり、その他にも数々の賞を受賞し…

マイクル・コナリー『汚名』

マイクル・コナリー 古沢嘉通訳 『汚名』 講談社文庫 マイクル・コナリー(1956-)の『汚名』を読了しました。ハリー・ボッシュを主人公とするシリーズ小説作品です。第何作目にあたるのかは分からなくなってしまいましたが。原題は“Two Kinds of Truth”です…

ウィリアム・シェイクスピア『テンペスト』

ウィリアム・シェイクスピア 小田島雄志訳 『テンペスト』 白水Uブックス ウィリアム・シェイクスピア(1564-1616)の『テンペスト』を読了しました。以前「あらし」という邦題で新潮文庫にて読んだ記憶があるのですが、それ以来の読書となります。昔に読ん…

カート・ヴォネガット『スラップスティック』

カート・ヴォネガット 浅倉久志訳 『スラップスティック』 ハヤカワ文庫 カート・ヴォネガット(1922-2007)の『スラップスティック』を読了しました。1976年に発表された長編小説です。本書では、主人公であるウィルバー(プロローグにはめ込まれた「枠」を…

チャック・パラニューク『ファイト・クラブ』

チャック・パラニューク 池田真紀子訳 『ファイト・クラブ』 ハヤカワ文庫 チャック・パラニューク(1962-)の『ファイト・クラブ』を読了しました。デヴィッド・フィンチャー監督のもとブラッド・ピットが主演して大ヒットした映画については、私は未視聴だ…

スチュアート・ダイベック『シカゴ育ち』

スチュアート・ダイベック 柴田元幸訳 『シカゴ育ち』 白水Uブックス スチュアート・ダイベック(1942-)の『シカゴ育ち』を読了しました。文学研究者で翻訳家でもある柴田氏が「これまで訳した中で最高の一冊」と述べている作品(それがいつの時点のことな…

スティーヴン・キング『IT』

スティーヴン・キング 小尾芙佐 『IT』 文春文庫 スティーヴン・キング(1947-)の『IT』を読了しました。二度にわたって映画化もされた、文庫本にして四巻の分量となる大作ですが、内容的にもキングの代表作と呼ぶのに相応しい内容となっています。27年前の…

シンクレア・ルイス『本町通り』

シンクレア・ルイス 斎藤忠利訳 『本町通り』 岩波文庫 シンクレア・ルイス(1885-1951)の『本町通り』を読了しました。セオドア・ドライサーやウィル・キャザーよりは10歳ほど年下で、そしてフィッツジェラルドやヘミングウェイよりは10歳ほど年上という世…

ジェイムズ・エルロイ『LAコンフィデンシャル』

ジェイムズ・エルロイ 小林宏明訳 『LAコンフィデンシャル』 文春文庫 ジェイムズ・エルロイ(1948-)の『LAコンフィデンシャル』を読了しました。『ブラック・ダリア』に始まる「暗黒のL.A.」四部作の第三作目に当たる作品なのですが、私が読むことになった…

トニ・モリスン『パラダイス』

トニ・モリスン 大社淑子訳 『パラダイス』 ハヤカワ文庫 トニ・モリスン(1931-2019)の『パラダイス』を読了しました。1993年のノーベル賞受賞後に初めて発表された作品が本書なのですが、層を成す厚みのある語りと緊密な構成が特徴の大作です。そして、一…

サルマン・ラシュディ『真夜中の子供たち』

サルマン・ラシュディ 寺門泰彦訳 『真夜中の子供たち』 岩波文庫 サルマン・ラシュディ(1947-)の『真夜中の子供たち』を読了しました。本書の主人公であるサリーム・シナイと同じく1947年にインドのボンベイで生まれたラシュディは(ただしその日時につい…

『対訳 ブラウニング詩集―イギリス詩人選(6)』

富士川義之訳 『対訳 ブラウニング詩集―イギリス詩人選(6)』 岩波文庫 『対訳 ブラウニング詩集―イギリス詩人選(6)』を読了しました。19世紀に活躍したイギリスの詩人ロバート・ブラウニング(1812-1889)の作品が、英語と日本語の対訳形式で40作品収録…

ロバート・A・ハインライン『月は無慈悲な夜の女王』

ロバート・A・ハインライン 矢野徹訳 『月は無慈悲な夜の女王』 ハヤカワ文庫 ロバート・A・ハインライン(1907-1988)の『月は無慈悲な夜の女王』を読了しました。ヒューゴー賞を受賞したハインラインの代表作のひとつとされる長編小説で、原題は“The Moon …

クリストファー・プリースト『逆転世界』

クリストファー・プリースト 安田均訳 『逆転世界』 創元SF文庫 クリストファー・プリースト(1943-)の『逆転世界』を読了しました。イギリスの作家で一般的にはSFジャンルに分類されるプリーストですが、いわゆる主流文学の読み手からも人気の作家であるよ…

スティーヴン・キング『ダークタワー Ⅲ 荒地』

スティーヴン・キング 風間賢二訳 『ダークタワー Ⅲ 荒地』 角川文庫 スティーヴン・キング(1947-)の『ダークタワー Ⅲ 荒地』を読了しました。シリーズを最後まで読み切るというタスクをこなすこと自体が目的となりつつある読書ですが、中だるみの気持ちが…

カズオ・イシグロ『クララとお日さま』

カズオ・イシグロ 土屋政雄訳 『クララとお日さま』 早川書房 カズオ・イシグロの『クララとお日さま』を読了しました。原題は“Klara and the Sun”です。ノーベル文学賞受賞第一作と謳われる本書のテーマは「AI」で、同じく現代イギリスを代表する作家のひと…

フランク・マコート『アンジェラの灰』

フランク・マコート 土屋政雄訳 『アンジェラの灰』 新潮文庫 フランク・マコート(1930-2009)の『アンジェラの灰』を読了しました。アイルランド系アメリカ人であるマコートが、アイルランドのリムリックで過ごした少年時代を回想して描いた自伝的小説(「…

マイクル・コナリー『レイトショー』

マイクル・コナリー 古沢嘉通訳 『レイトショー』 講談社文庫 マイクル・コナリーの『レイトショー』を読了しました。マイケル・ボッシュを主人公とする一連のシリーズで知られるコナリーですが、今回の作品はロス市警に勤める女性刑事レネイ・バラードを主…

『対訳 ディキンソン詩集―アメリカ詩人選(3)』

亀井俊介訳 『対訳 ディキンソン詩集―アメリカ詩人選(3)』 岩波文庫 『対訳 ディキンソン詩集―アメリカ詩人選(3)』を読了しました。ポー、ホイットマン、フロストなどの対訳も刊行されている岩波文庫の対訳アメリカ詩人選集ですが、今回読むのはエミリー…

ウィリアム・トレヴァー『ラスト・ストーリーズ』

ウィリアム・トレヴァー 栩木伸明訳 『ラスト・ストーリーズ』 国書刊行会 ウィリアム・トレヴァー(1928-2016)の『ラスト・ストーリーズ』を読了しました。アイルランド出身の作家トレヴァーの最後の作品集が本書で、10編の短編作品が収録されています。掬…

J・G・バラード『太陽の帝国』

J・G・バラード 山田和子訳 『太陽の帝国』 創元SF文庫 J・G・バラード(1930-2009)の『太陽の帝国』を読了しました。『ハイ・ライズ』以来の読書となる二冊目のバラード作品は、1934年に発表されてブッカー賞候補作ともなったベストセラー作品で、バラード…

フォークナー『八月の光』

フォークナー 諏訪部浩一訳 『八月の光』 岩波文庫 フォークナー(1897-1962)の『八月の光』を読了しました。1932年に発表された作品でヨクナパトーファ・サーガの一作とされますが、原題である“Light in August”は当初は“Dark House”であったといわれます…