文学・会議

海外文学を中心に、読書の備忘録です。

池澤夏樹『スティル・ライフ』

池澤夏樹 『スティル・ライフ』 中公文庫 池澤夏樹の『スティル・ライフ』を読了しました。1988年に芥川賞を受賞した作品です。個人文学全集の編者として、また書評家としての池澤氏については知っているのですが、実際のところ小説を読むのは初めてのことで…

レイモンド・チャンドラー『ロング・グッドバイ』

レイモンド・チャンドラー 村上春樹訳 『ロング・グッドバイ』 ハヤカワ文庫 レイモンド・チャンドラー(1888-1959)の『ロング・グッドバイ』を読了しました。ずっと昔に清水氏の翻訳で読んだことはあったのですが、久しぶりの再読となりました。プロットの…

J・L・オースティン『オースティン哲学論文集』

J・L・オースティン 坂本百大監訳 『オースティン哲学論文集』 勁草書房 J・L・オースティン(1911-1960)『オースティン哲学論文集』を読了しました。発話行為という概念を提唱したイギリス日常言語学派の哲学者、オースティンの論文集です。収録された12の…

『中世イギリス英雄叙事詩 ベーオウルフ』

忍足欣四郎訳 『中世イギリス英雄叙事詩 ベーオウルフ』 岩波文庫 英文学最古の文献(諸説あるようですが本書解説によれば8世紀頃に成立したとされます)といわれることもある『ベーオウルフ』を読了しました。現在のデンマークであるデネの国を舞台として、…

J・アップダイク『金持になったウサギ』

J・アップダイク 井上謙治訳 『金持になったウサギ』 新潮社 J・アップダイク(1932-2009)の『金持になったウサギ』を読了しました。『走れウサギ』(1960)、『帰ってきたウサギ』(1971)に続いて、1981年に発表されたウサギことハリー・アングストローム…

ロック『教育に関する考察』

ロック 服部知文訳 『教育に関する考察』 岩波文庫 ロック(1632-1704)の『教育に関する考察』を読了しました。認識論、道徳論、政治哲学、宗教論など幅広い分野で自身の思想を展開したロックですが、本書においてはその教育論を説いています。ルソーの『エ…

シェイクスピア『ロミオとジュリエット』

シェイクスピア 松岡和子訳 『ロミオとジュリエット』 ちくま文庫 ちくま文庫のシェイクスピア全集2『ロミオとジュリエット』を読了しました。松岡和子さんの訳によるこの全集を順番に読んでいきたいと考えているのですが、読み終えるまでにいつまでかかるで…

アーサー・C・クラーク『2001年宇宙の旅』

アーサー・C・クラーク 伊藤典夫訳 『2001年宇宙の旅』 ハヤカワ文庫 アーサー・C・クラーク(1917-2008)の『2001年宇宙の旅』を読了しました。スタンリー・キューブリックの映画がつとに有名な本作ですが、残念ながら映画を見たことはなく、小説(本書)を…

D・デイヴィドソン『行為と出来事』

D・デイヴィドソン 服部裕幸・柴田正良訳 『行為と出来事』 勁草書房 D・デイヴィドソン(1917-2003)の『行為と出来事』を読了しました。本書はデイヴィッドソンの主として行為論に関わる論文を集めた“Essays on Actions and Events”の抄訳です。どうせなら…

W・G・ゼーバルト『アウステルリッツ』

W・G・ゼーバルト 鈴木仁子訳 『アウステルリッツ』 白水社 W・G・ゼーバルト(1944-2001)の『アウステルリッツ』を読了しました。ずっと読んでみたいと思っていた作品なのですが、このたび新装版が刊行されることになり、嬉しい限りです。 本書の内容をか…

島本理生『リトル・バイ・リトル』

島本理生 『リトル・バイ・リトル』 講談社文庫 島本理生の『リトル・バイ・リトル』を読了しました。同時代の日本人作家の作品にももう少し触れておこうという意図をもって手に取った作品のひとつが本書です。家族や周囲の人々との係わり合いを、瑞々しく柔…

ナボコフ『偉業』

ナボコフ 貝澤哉 『偉業』 光文社古典新訳文庫 ナボコフ(1899-1977)の『偉業』を読了しました。『偉業』はナボコフが1932年にロシア語で発表したいわば初期の長編作品にあたりますが、後年1972年に“Glory(栄光)”というタイトルで、ナボコフの息子ドミト…

星新一『ようこそ地球さん』

星新一 『ようこそ地球さん』 新潮文庫 星新一(1926-1997)の『ようこそ地球さん』を読了しました。本書のあとがきによると、同じく新潮文庫に収められた『ボッコちゃん』が、単行本の『ようこそ地球さん』と『人造美人』からの自選短編といくつかの他の作…

E・フッサール『ヨーロッパ諸学の危機と超越論的現象学』

E・フッサール 細谷恒夫・木田元訳 『ヨーロッパ諸学の危機と超越論的現象学』 中公文庫 E・フッサール(1859-1938)の『ヨーロッパ諸学の危機と超越論的現象学』を読了しました。フッサール最晩年の講義をもとに、未完の末尾に遺稿の一部を付加するかたちで…

ドナルド・デイヴィドソン『真理と解釈』

ドナルド・デイヴィドソン 野本和幸・植木哲也・金子洋之・高橋要 訳 『真理と解釈』 勁草書房 ドナルド・デイヴィドソン(1917-2003)の『真理と解釈』を読了しました。デイヴィドソンは20世紀アメリカの哲学者としては最も有名な論客の一人ですが、主とし…

ハーマン・メルヴィル『幽霊船 他一篇』

ハーマン・メルヴィル 坂下昇訳 『幽霊船 他一篇』 岩波文庫 ハーマン・メルヴィル(1819-1891)の『幽霊船 他一篇』を読了しました。本書には、『白鯨』の作者として知られる、19世紀を代表するアメリカの作家メルヴィルの中篇小説が二作収録されています。…

Richard Wright “Native Son”

Richard Wright “Native Son” Harper Perennial リチャード・ライト(1908-1960)の“Native Son”を読了しました。本書には『アメリカの息子』という1972年にハヤカワ文庫に収められた邦訳がありますが、入手しづらい状況が続いています。現在ではあまり読ま…

パトリック・モディアノ『暗いブティック通り』

パトリック・モディアノ 平岡篤頼訳 『暗いブティック通り』 白水社 パトリック・モディアノ(1945-)の『暗いブティック通り』を読了しました。ゴンクール賞の受賞作品である本書が発表されたのは1978年。日本ではその翌年に邦訳が出版されていますが、韓国…

赤林朗・児玉聡編『入門・倫理学』

赤林朗・児玉聡編 『入門・倫理学』 勁草書房 赤林朗・児玉聡編『入門・倫理学』を読了しました。もともとは医療者向けの倫理学の教科書として書かれたものを、倫理学一般の入門書として再編集したのが本書とのことです。倫理学という学問の特徴や分類から始…

ルートヴィヒ・ヴィトゲンシュタイン『哲学探究』

ルートヴィヒ・ヴィトゲンシュタイン 丘沢静也役 『哲学探究』 岩波書店 ルートヴィヒ・ヴィトゲンシュタインの『哲学探究』を読了しました。特異な思想家であるウィトゲンシュタインの「後期」の代表的著作が本書『哲学探究』です。しかし、本書はあくまで…

冨田恭彦『詩としての哲学 ニーチェ・ハイデッガー・ローティ』

冨田恭彦 『詩としての哲学 ニーチェ・ハイデッガー・ローティ』 講談社選書メチエ 冨田恭彦の『詩としての哲学 ニーチェ・ハイデッガー・ローティ』を読了しました。定まった事実や真理なるものを希求するプラトン主義的な哲学に対して、想像力を通じた開か…

W・ジェイムズ『宗教的経験の諸相』

W・ジェイムズ 桝田啓三郎訳 『宗教的経験の諸相』 岩波文庫 W・ジェイムズ(1842-1910)の『宗教的経験の諸相』を読了しました。最近のプラグマティズム関連の読書の一環として手に取った本書ですが、ジェイムズ自身の哲学が孕む特殊さを脇に置いたとして…

シェリル・ミサック『プラグマティズムの歩き方 21世紀のためのアメリカ哲学案内』

シェリル・ミサック 加藤隆文訳 『プラグマティズムの歩き方 21世紀のためのアメリカ哲学案内』 勁草書房 シェリル・ミサックの『プラグマティズムの歩き方 21世紀のためのアメリカ哲学案内』を読了しました。現代の気鋭のプラグマティストであるミサックが…

Alfred Jules Ayer “Language, Truth and Logic”

Alfred Jules Ayer “Language, Truth and Logic” Dover Publications, Inc. Alfred Jules Ayer(1910-1989)の “Language, Truth and Logic”を読了しました。論理実証主義の影響の下に発表された20世紀の分析哲学の古典ともいえる作品ですが、邦訳が手に入り…

バートランド・ラッセル『哲学入門』

バートランド・ラッセル 高村夏輝訳 『哲学入門』 ちくま学芸文庫 バートランド・ラッセル(1872-1970)の『哲学入門』を読了しました。本書の原題は“The Problems of Philosophy”で発表されたのは1912年、ホワイトヘッドとの共著『プリンキピア・マテマティ…

パース、ジェイムズ、デューイ『プラグマティズム古典集成』

パース、ジェイムズ、デューイ 植木豊訳 『プラグマティズム古典集成』 作品社 パース、ジェイムズ、デューイの『プラグマティズム古典集成』を読了しました。古典的プラグマティストである思想家三名のプラグマティズムに関する重要論文を一冊に編纂したの…

W・ジェイムズ『プラグマティズム』

W・ジェイムズ 桝田啓三郎訳 『プラグマティズム』 岩波文庫 W・ジェイムズ(1842-1910)の『プラグマティズム』を読了しました。「プラグマティズム」という言葉の創始者はパースだったとすれば、それを人口に膾炙するものとしたのはウィリアム・ジェイムズ…

マリオ・バルガス・ジョサ『マイタの物語』

マリオ・バルガス・ジョサ 寺尾隆吉訳 『マイタの物語』 水声社 マリオ・バルガス・ジョサ(1936-)の『マイタの物語』を読了しました。本訳書における表記にしたがって作者の名前は「バルガス=リョサ」ではなく「バルガス・ジョサ」としておきます。日本で…

村上春樹『村上さんのところ』

村上春樹 絵:フジモトマサル 『村上さんのところ』 新潮文庫 村上春樹の『村上さんのところ』を読了しました。期間限定の特設ウェブサイトを通じて一般の人から送られてきた37,465通のメールをすべて読み、それに対して行った3,716通の回答の中から473通を…

ローベルト・ゼーターラー『ある一生』

ローベルト・ゼーターラー 浅井晶子訳 『ある一生』 新潮社 ローベルト・ゼーターラー(1966-)の『ある一生』を読了しました。オーストリアの作家・脚本家・俳優であるというローベルト・ゼーターラーが2014年に発表した本書は、ドイツ語圏で80万部を記録す…