文学・会議

海外文学を中心に、読書の備忘録です。

モーパッサン『女の一生』

モーパッサン 新庄嘉章訳

女の一生』 新潮文庫

 

モーパッサンは昔『脂肪のかたまり』を読んで、よくできた小説だなぁと感心した覚えがあるのですが、この『女の一生』については何となく今日まで読むことがないまま時間が過ぎてしまいました。タイトルがそのひとつの原因になっているのではないかとも思うのですが、フランス語の原題は“UNE VIE”で「ある一生」だということを知ったのも、本書を読み始めてからのことだったという次第。

 

人生に対するあらゆる希望や期待に、ことごとく裏切られてしまう女性ジャンヌの一生が描かれた作品。よくできた作品だとは思うのですが、あまりにも救いのない話に、やや気持ちが滅入ってしまうのも事実。

 

妻であるジャンヌを裏切って女中と逢瀬を重ね、果ては妊娠させてしまう夫のジュリヤン。世間体を気にして、所有する領地を持参金に付けて女中を嫁がせようとするジャンヌの父親。そのことを知った吝嗇家のジュリヤンは、自分の不貞行為を棚に上げて、自分の財産が減ってはかなわないと、女中に持参金を持たせようとするジャンヌの父親をなじる。捨て台詞を残してその場を立ち去ったジュリヤンのあまりの吝嗇ぶりがおかしくて、ジャンヌと両親は思わず笑ってしまう。ここで思わず笑ってしまう人間の姿を描くモーパッサンに恐ろしさを感じてしまう。

 

【満足度】★★★☆☆