文学・会議

海外文学を中心に、読書の備忘録です。

J.L.ボルヘス『アレフ』

J.L.ボルヘス 鼓直

アレフ』 岩波文庫

 

アルゼンチンの作家、ホルヘ・ルイス・ボルヘスの『アレフ』を読了。2017年1月に岩波文庫に収められていますが、ラテンアメリカ文学研究者として有名な鼓さんによる新訳です。

 

ボルヘスは同じく岩波文庫の『伝奇集』を学生時代に読んだことがあって、有名な「バベルの図書館」など目くるめくような“世界”に魅せられた記憶があります。ただ、ボルヘスの文体はなぜか私には相性が悪くて、短い作品なのに読み進めるのに苦労したことも覚えています。

 

生涯のうちで長編小説は書かなかったというボルヘスですが、本書『アレフ』も17の短編小説からなる作品です。バベルの図書館が、過去・現在・未来において可能的なすべての書物を収めた図書館という奇想を描いているのに対して、本書の表題作である「アレフ」では「点のすべてを含む空間」、すなわち、その中に無際限の宇宙空間が存在する空間の一点というものが描かれている。

 

奇想に満ちた空間〈アレフ〉をボルヘスがどのように描写したかについては本書をお読みいただくとして、その描写にボルヘス本人は決して満足しなかったのではないかというのが私の感想。作品の終盤でボルヘス本人を思わせる主人公は、「私は、ガライ街の〈アレフ〉は偽の〈アレフ〉であったと信じている」と述べる。ボルヘスの作品が無限の拡がりを持つことができるのはそのためだ。

 

【満足度】★★★★☆