文学・会議

海外文学を中心に、読書の備忘録です。

アーサー・C・クラーク『幼年期の終わり』

アーサー・C・クラーク 福島正実

幼年期の終わり』 ハヤカワ文庫

 

アーサー・C・クラークさんの本は初読。SFの古典作品は読んでおきたいと思って手に取った次第。

 

冒頭ではこれから宇宙に飛び立とうとする人類の姿が描かれる。かつて共に学んだ二人の科学者がアメリカとソ連という敵国に分かれながらも、それぞれの矜持を胸に秘めた競争を…という物語かと思いきや、そうではなく地球外から飛来した宇宙船によって地球の「管理」が始まるというストーリ展開が続きます。

 

三部構成で描かれる地球あるいは人類の「幼年期の終わり」は、読者の予想を少しずつ裏切りながら、意外な結末に着地する。SFというジャンルが同時代性を重要な要素として含むのだとすると、SFの古典を読むという行為には矛盾も感じられてしまうわけですが、85年前に出版された『幼年期の終わり』はあらためて現代的なテーマを持つ作品であると感じられるものでした。作家の想像力は、ときには一周巡ったかたちで、たとえば「シンギュラリティ」という問題として、次の時代に顔を出したりするのだなと。

 

【満足度】★★★☆☆