文学・会議

海外文学を中心に、読書の備忘録です。

スタンダール『パルムの僧院』

スタンダール 生島遼一

パルムの僧院』 岩波文庫

 

東京出張中に移動の新幹線やホテルで読んでいた本。スタンダールを読むのは学生時代に読んだ『赤と黒』以来のこと。あまり予備知識なく取り掛かったので、読み始めたときは戦争の描写に面白さを感じながらも、一体どのような作品なのかよく解らぬまま。

 

舞台がパルムに移ってからは、政治や策謀にロマンスが絡まって展開する物語に不思議な読み心地を覚えました。ホテルのベッドに寝転んで夢中で読んでしまったのは、単純にそのストーリーに引き込まれたせいもあるのでしょうが、何よりもこの「不思議な読み心地」によるものだと思います。政争・悲恋・脱獄など物語のパーツ自体は、これまでにもどこかで出会ったものばかりなのですが、そこに登場する人物の心理自体が定型に当てはまらないリアルさを感じさせて、それが何とも不思議な読み心地に繋がったということなのでしょう。

 

しかし『赤と黒』の方が面白かったかなと思ってしまうのは、作家の作品の中で初めて読んだものを最高傑作だと感じてしまう私の奇妙な傾向性のせいでもあります。

 

【満足度】★★★☆☆