文学・会議

海外文学を中心に、読書の備忘録です。

オルダス・ハクスリー『すばらしい新世界』

オルダス・ハクスリー 大森望

すばらしい新世界[新訳版]』 ハヤカワ文庫

 

光文社からも新訳の文庫が出ていた『すばらしい新世界』ですが、私はハヤカワ文庫で読了しました。「ディストピア小説の名作」と銘打たれた帯には伊坂幸太郎さんの推薦文も載っていて、海外文学好きやSF好きだけではなく、多くの人の手に取られたのではないでしょうか。

 

すばらしい新世界』では、とりわけ生殖に関する概念が、私たちの生きる世界とは完全に異なっています。人間は受精卵の状態から完全なる管理下に置かれ、すべての子どもは瓶の中から「孵化」されます。そのような時代においては、「親」あるいは「父」や「母」という言葉が「淫語」として取り扱われているという状況には笑ってしまいます。この私たちから見ると奇妙な文明社会の描写と、そこから隔離されて育った野生児(サヴェッジ)の「文明社会」との邂逅の様子が、本作品の中核を成しています。

 

楽しく読むことができた本書ですが、もう少し早く(若い頃に)出会っていればもう少し違った感じ方もしたのかもしれません。出会う時期も含めて読書体験ということで、それは仕方のないことですが。

 

【満足度】★★★☆☆