文学・会議

海外文学を中心に、読書の備忘録です。

トルーマン・カポーティ『夜の樹』

トルーマン・カポーティ 川本三郎

『夜の樹』 新潮文庫

 

前回の記事『嵐が丘』と同じく、高校時代だったか大学時代だったか忘れてしまったのですが、本書『夜の樹』も今回が再読になります。「ミリアム」は特に記憶に残っている作品でしたが、今回あらためて読んだときにもやはり鮮烈な印象がありました。この怖さはやみつきになります。しんとした冬の雪がその怖さを増幅させているように感じたのは、まだ寒さの残る今の時期に読んだせいでしょう。

 

前回読んだときはまったく覚えていなかったのですが、今回は「銀の壜」という作品も印象に残りました。ある商店主がライバル店を上回るための話題づくりとして、壜の中にコインをびっしりと詰めて、その金額を当てさせるという企画を思いつく。そこに「他の人間が見えないものを見ることが出来る」という少年が現れて…というストーリー。

 

作りが映画的というか何というか、O・ヘンリーの短編を読んでいるような趣きもあるのですが、結末を巡ってその裏側で行われたことを行間からあれこれと想像するのは、文学を読むという行為ならではの楽しい作業でした。

 

【満足度】★★★☆☆