『都会と犬ども』 新潮社
ペルーの作家であるバルガス=リョサの『都会と犬ども』を読了。バルガス=リョサ(「ジョサ」という表記も見かけますが、どちらが市民権を得るのでしょうか)の作品を読むのはこれが初めて。月並みな感想ですが、とてもおもしろかった。特に後半の第二部は引き込まれて一気に読んでしまいました。
士官学校を舞台に描かれる少年たちの姿は「スクールカースト」なる現代語を思い起こさせるもので、読んでいて息が詰まるような濃密な緊張感を覚えます。そして、暴力や堕落が支配する学校の中で起きたある事件をめぐって、少年たちの対立に教員である軍人・大人たちの思惑が絡みながら、物語は進行していきます。
すっかり感心してしまったのはバルガス=リョサの「語り」のうまさ。田舎から出てきた粗野で暴力的な少年、繊細で感じやすい心を持った少年、腐敗する社会の中で軍隊の持つ規律に望みを託す中尉など、様々な登場人物の語りが、比較的短い断章として組み合わされ、読者はリズム良くストーリーを追うことができます。そして物語の最後になって、そのナラティブに隠された「騙り」の存在に気が付いて、また大きなカタルシスを感じることができるという、何とも贅沢な構造になっています。
これは他の作品を読むのも楽しみですね。
【満足度】★★★★★