文学・会議

海外文学を中心に、読書の備忘録です。

ユゴー『ノートル=ダム・ド・パリ』

ユゴー 辻昶・松下和則訳

ノートル=ダム・ド・パリ』 岩波文庫

 

フランス・ロマン主義を代表する作家であるヴィクトル・ユゴーの作品。昔々、赤川次郎三毛猫ホームズシリーズのどの作品だったかで、本書に登場するカジモドの名にちなんだ「梶本」(梶元だったかな?)という登場人物が出てきたことを思い出しました。

 

ユゴーといえばやっぱり『レ・ミゼラブル』で、学生時代にあの長い長い小説を飽きもせずに読むふけって、ジャンバルジャンに襲いかかる悲劇とそれに対する超人的な刻苦の様に心震わせたことを覚えています。何年か前に見たヒュー・ジャックマン主演のミュージカル映画もおもしろかった。

 

それと比較しても仕方ないのですが、本書『ノートル=ダム・ド・パリ』はいささかプロットがこなれていないように感じますし、登場人物の造形にも少し違和感を覚えるところが多かった印象です。冒頭の使節登場の場面は個人的に嫌いではないですし、その時代のパリを俯瞰的に描くために挿入されたシーンなのだと思いますが、描写がいささか冗長な気もします。そして、物語を通じて狂言回しの役目を演じるグランゴワールは、いつの間にエスメラルダではなくヤギの方を愛するようになったのでしょうか…?

 

読み終えた今となっては、それらの瑕疵も愛すべき不完全さであると感じるのですが、読んでいる途中はそんなところがずっと気になっていました。それでも、物語の最後にたどり着いて、そこで読んだノートルダム大聖堂でのラストシーンの描写には思わず息を飲んでしまうのでした。

 

【満足度】★★★☆☆