文学・会議

海外文学を中心に、読書の備忘録です。

『対訳 シェイクスピア詩集―イギリス詩人選(1)』

柴田稔彦編

『対訳 シェイクスピア詩集―イギリス詩人選(1)』 岩波文庫

 

リア王』、『ハムレット』、『マクベス』をはじめとした数々の戯曲で知られるシェイクスピアの詩作を紹介する選集。『ソネット集』からセレクトされたソネットに、劇中歌として登場する歌、そして物語詩『ヴィーナスとアドーニス』と『ルークリース凌辱』からその特徴的な部分が収録されています。

 

Shall I compare thee to a summer's day ?

君を夏の一日と比べてみようか?

と詠まれる18番のソネットはつとに有名とのことですが、恥ずかしながら本書を読むまでは聞いたことがありませんでした。そして、ここで詩人から呼びかけられる「君(thou)」 が女性ではなく青年であるということにも驚かされます。この「君」の正体については諸説あるようなのですが、そこまで深入りすることはやめておきます。

 

二篇の物語詩に見られる、己の欲望に忠実なかたちで美少年アドーニスに迫るヴィーナスや、己の欲望を制御することができないままに凶行に至るタークウィンの姿は、シェイクスピアの劇作にも通じるものがあって印象に残りました。

 

【満足度】★★★☆☆