文学・会議

海外文学を中心に、読書の備忘録です。

G・ガルシア=マルケス『族長の秋 他6篇』

G・ガルシア=マルケス 鼓直 他訳

『族長の秋 他6篇』 新潮社

 

ガルシア=マルケス(1928-2014)の『族長の秋 他6篇』を読了。「族長の秋」については学生時代に集英社文庫で読んだことがあります。「他6篇」とある短編作品群については『エレンディラ』としてちくま文庫で出版されているようですが、今回が初読でした。

 

「無垢なエレンディラと無情な祖母の信じがたい悲惨の物語」と題された作品では、タイトルに偽りなく、無情な祖母の過酷な要求に対して主人公のエレンディラが「そうするわ、お祖母ちゃん」と答える姿が印象的なのですが、さらに印象的なのは祖母の軛をついに逃れ出て地の果てへと消えていくエレンディラの「自由」でした。これも小説の力を感じさせられる作品。

 

「族長の秋」は架空の国の大統領の「死」が語られる場面から始まるのですが、そこで死が語られた大統領は、ときにその死が替え玉により身代わりされたり、時系列が複雑に錯綜するプロットの中で何度でも蘇ったりしつつ、その孤独(秋)を深めながらときには滑稽でもある暴力や狂気の底へと沈殿していきます。改行なく続く独特のテキストは、するすると頭に入ってくる文体ではないのですが、何とも読ませる文章で、さすがはガルシア=マルケスという感じです。個人的には『百年の孤独』よりもこの『族長の秋』の方がおもしろいと感じます。

 

南米文学の雄。新潮社から出ているガルシア=マルケス全小説は、死ぬまでにすべて読んでみたいなと思っています。

 

【満足度】★★★★☆