文学・会議

海外文学を中心に、読書の備忘録です。

若島正『ロリータ、ロリータ、ロリータ』

若島正 『ロリータ、ロリータ、ロリータ』 作品社

 

海外文学作品、つまりは、いわゆる「一次文献」だけではなくて、研究書や解説書などの「二次文献」を読了したときも、その感想を綴っていきたいと思います。今回はナボコフ研究者として知られる若島正の『ロリータ』論を読みました。若島氏は京都大学英米文学研究室の教授で、英米文学の研究者・翻訳者としてだけではなく、詰め将棋作家としてもよく知られています。

 

ナボコフ曰く、人は書物を読むことはできず、ただ「再読する」ことができるだけだということですが、その持論を体現するかのように精緻な仕掛けが埋め込まれた『ロリータ』という書物の細部に分け入って、そこに隠された文学的な仕掛けを解き明かそうという本書の試みは、それを読むだけでわくわくしますし、批評の醍醐味というものを感じることができます。「よい読者でありたい」という若島氏の丹念な分析は、小説を読むということの奥深さを思い知らされます。ナボコフの作品をもっと読んでみたいと感じさせられます。

 

「小説の読み方」というものは教わるものではないと、かつての私は考えていたのですが、こうした面白くて鋭い文学批評に触れてしまうと、その浅薄な考えを改めざるを得ません。もっと豊かな読書体験のために、優れた文学批評にも積極的に触れていきたいと思った次第です。

 

【満足度】★★★★☆