文学・会議

海外文学を中心に、読書の備忘録です。

フランシス・ホジソン・バーネット『小公女』

フランシス・ホジソン・バーネット 畔柳和代訳

『小公女』 新潮文庫

 

フランシス・ホジソン・バーネット(1849-1924)の『小公女』を読了しました。原題は「A Little Princess」。普段はあまり読むことのない児童文学ですが、新潮文庫の新訳シリーズで手に取りました。子どもの頃にテレビアニメで見たような気もしますが、あまり鮮明な記憶はありません。主人公の名前が「セーラ」で、黒い服を着て屋根裏部屋で暮らしていることだけは覚えていたのですが。

 

読んでいるうちに感じたのは、連続アニメにするとたしかに面白い物語だな、ということ。最愛に父親に連れられて不安を抱えながらもロンドンにやってくる場面、校長のミス・ミンチンとの出会い、級友となるアーメンガードとの会話、意地悪なラヴィニア、年少のロッティとのふれあい、召使いのベッキーとの友情、そして告げられる父の死と屋根裏部屋への転落…。登場人物のキャラも立っているし、ストーリーテリングにも腐心されているように見受けられます。

 

その分だけ、それぞれのエピソードや登場人物の掘り下げについては物足りない点もあるのですが、本書はこれで完成したというものよりは、主人公のセーラが想像力を何よりも重視したように、作者の中ではまだまだ自由に発展していくことのできるものだったのかもしれません。

 

【満足度】★★★☆☆