文学・会議

海外文学を中心に、読書の備忘録です。

ジョーゼフ・ヘラー『キャッチ=22』

ジョーゼフ・ヘラー 飛田茂雄訳

『キャッチ=22』 ハヤカワ文庫

 

ジョーゼフ・ヘラー(1923-1999)の『キャッチ=22』を読了しました。大学時代からずっと読みたいと思っていた作品なのですが、当時は品切れ重版未定のまま入手できない状況が続いていました。このたびは2016年に新版として発売されたハヤカワ文庫で、念願かなっての読書となりました。

 

何とも不思議な戦争小説。第二次世界大戦中、イタリアにある島の米軍基地に勤務するヨッサリアンが物語の主人公なのですが、彼は祖国のために勇敢に闘う戦士などではなく、出撃命令を避けるためにひたすらに病気を装う厭戦家です。そして、文庫本で20ページから30ページ程度の比較的短いチャプターごとに、戦争小説に似つかわしくない様々なキャラクターが登場し、目まぐるしく狂気じみたストーリーが展開されていきます。

 

本作を読み進めながら覚えた違和感が解消されたのは、巻末の解説で本書の時系列が決して直線的なものではないことを知ったときでした。繰り返される悪夢のような現実。最初は滑稽なスラップスティックと感じられた物語は、後半に至るにつれて過剰な狂気をまとって恐怖を感じさせる方向へと展開していきます。しかし、本書の最後ではしっかりとカタルシスを感じさせられて、この奇妙な物語をまた最初から読み返してみたい気分にさせられるのです。

 

また読み返したい小説、気が向いたページを開いて読み進めたい小説。大学時代に読んでいたら、また違った感想を持っていたのでしょうか。

 

【満足度】★★★★☆