サマセット・モーム 金原端人訳
『英国諜報員アシェンデン』 新潮文庫
サマセット・モーム(1874-1965)の『英国諜報員アシェンデン』を読了しました。モームは短編のいくつかと『月と六ペンス』を読んで、そのうまさに感心した(決して感動ではなかったのですが…)のを覚えています。モームは第二次世界大戦の折、実際に諜報員として活動していた時期もあるとのことで、本作はそのときの経験をもとに著された“スパイ小説”の嚆矢ともいえる作品とのこと。
軽妙な会話を読んで巧いなと思わされるところもあるのですが、いまひとつ読み方が解らない作品ではありました。連作短編集というべき構成でその各エピソードをそのままに楽しめばよいのかもしれませんが、過剰に洗練されたエンタメ作品を読み慣れた身としては物足りなく思えてしまうのも事実。あるいは微妙な心理的かけひきを読み取るには、今の私が疲れすぎているのかもしれません。
これも新潮文庫の新訳があったからこそ手に取ることができた作品でした。引き続き、海外文学の新訳・復刊が続くことを祈ります。
【満足度】★★☆☆☆