フランソワーズ・サガン 河野万里子訳
『悲しみよ こんにちは』 新潮文庫
フランソワーズ・サガン(1935-2004)の『悲しみよ こんにちは』を読了しました。高校時代に読んだ記憶があるのですが、今回は新訳での読み直し。多くの人に影響を与えた作品だと思いますが、もともと中学生くらいのときに読みふけっていた赤川次郎さんの小説「殺人よ、こんにちは」も元ネタはこの作品でした。濃いピンク色のカバー背表紙が本屋でも目立ちます。
少女セシルが父親とその恋人の仲を引き裂くために仕掛けた奸計が悲劇的な結末をもたらすというプロットですが、今回本作を読み直してみて、そのストーリー部分はあまり重要なものではないのだろうと感じました。主人公セシルが周囲の人物たちとの関係性のなかで築いていく世界認識のちょっとしたズレとリアリティこそが、本作が多くの人を惹きつける理由になっているのではないかと思います。
闇のなかで、わたしは彼女の名前を、低い声で、長いあいだくり返す。するとなにかが胸にこみあげてきて、わたしはそれをその名のままに、目を閉じて、迎えいれる。悲しみよ、こんにちは。
小説末尾の文章は本当に美しいですね。
身体がだるく、体調を崩してしまいそうな予感。
【満足度】★★★☆☆