文学・会議

海外文学を中心に、読書の備忘録です。

パース『連続性の哲学』

パース 伊藤邦武編訳

『連続性の哲学』 岩波文庫

 

チャールズ・サンダース・パース(1839-1914)の『連続性の哲学』を読了しました。このブログは基本的に外国文学の読書記録なのですが、読んだ本の記録は付けておくという方針のもとで哲学関連の本についても投稿しておこうと思います。本書はプラグマティズム創始者といわれるアメリカの哲学者・論理学者・数学者であるパースの論文集について、一般読者への読みやすさを考慮して独自に編集・訳出されたものです。

 

論理学者を自認するパースの姿は、本書の第三章で「存在グラフ」と呼ばれる独自の記法を用いて、「関係項の論理学」すなわち述語論理学について語る場面に見て取ることができるのですが、本書の全体を通した目的は、パースが「連続性」と呼ぶものの実在性を主張する形而上学を打ち立てることにあるようです。本書の第四章から第六章にかけてはその形而上学の樹立に向けて混沌とした議論が進むのですが、正直なところ私には理解が及ばない部分も多々あるのでした。

 

編訳者の解説では以下のように述べられています。

 

パースの哲学は、深い宗教的感情と、形式的で厳密な思考の徹底した追及とが、独自な仕方で織り合わさったものである。それは十九世紀後半のアメリカの思想状況という背景を考慮に入れても、なおそこからはみだしてしまうような、独特の広さと深さを備えた体系的思索の産物であった。

 

パースという哲学者の不思議で捉えどころのない相貌を簡潔に言い表した言葉だと思います。

 

【満足度】★★★☆☆