文学・会議

海外文学を中心に、読書の備忘録です。

トマス・ピンチョン『V.』

トマス・ピンチョン 小山太一・佐藤良明訳

『V.』 新潮社

 

トマス・ピンチョン(1937-)の『V.』を読了しました。ポストモダン文学の申し子というか、むしろ「ピンチョンの文学=ポストモダン文学」という等式すら成立してしまうのですが、1963年に発表された本書は彼が26歳(それとも25歳?)のときの作品だというのだから、まったくもって驚きです。ピンチョン入門編として『競売ナンバー49の叫び』を読んだのが、たしか昨年のことなのですが、今年のうちにはもう一冊ピンチョンを読んでおきたいと思って、彼のデビュー作である本書『V.』に取り掛かりました。

 

何とも粗筋を紹介しづらい作品なのですが、元海兵であるベニー・プロフェインの放浪の日々と、歴史の黒幕「V」をめぐって探求を続けるハーバード・ステンシルの物語とが、場面や時制を自由自在に変動させながら複雑に絡まりあうかたちで本書は構成されています。作品の中に埋め込まれた数々の暗号めいた挿話を読み解くことは二回目の読書(もしあれば)に取っておくとして、第六章「プロフェインが路上の暮らしに戻るの巻」のフィーナをめぐるエピソードなど、独特の叙情性を感じる描写が多いのは意外でした。普通に読んでも面白い、というやつでしょうか。

 

きっと二回目に読んだ方がもっと面白いというのは名作であることの証拠なのだと思いますが、果たしてその二回目の読書はいつのことになるのでしょうか。その前にまずは一回目の読書、来年は『重力の虹』を読みたいですね。

 

【満足度】★★★★☆