文学・会議

海外文学を中心に、読書の備忘録です。

ピーター・キャメロン『最終目的地』

ピーター・キャメロン 岩本正恵

『最終目的地』 新潮社

 

ピーター・キャメロン(1959-)の『最終目的地』を読了しました。ピーター・キャメロンアメリカ・ニュージャージー州生まれの作家で、作家名で検索すると『うるう年の恋人たち』(1992年)、『ママがプールを洗う日』(1992年)、『ウィークエンド』(1996年)など、90年代に何冊かの作品が日本でも翻訳出版されています(いずれも山際淳司さんが翻訳しています)。本書は2002年に発表され、PEN/フォークナー賞とロサンゼルス・タイムズ文学賞の最終候補になった作品です。

 

ウルグアイの田舎町に暮らす、とある人々。彼らは自殺した作家の妻、愛人とその娘、作家の兄とその恋人である青年。本書の冒頭を飾るのは、彼らのもとに届いた、作家の自伝を書きたいというアメリカの学生からの手紙です。学生は自伝を書くことの承諾を得るためにウルグアイに住む彼らのもとへ訪れ、そしてその訪問によって彼らの人生はゆっくりと動かされていくことになります。

 

本書のカバー裏では「イギリス古典小説の味わいをもつ」と評されていますが、(決して皮肉ではなく)いわゆる小説好きを喜ばせ感心させるのに十分な要素を持った作品です。「本屋大賞を取りそうな作品」というと、一部の人に怒られてしまうのかもしれませんが…。私もこういう小説は好きですし、丁寧な情景描写や洒脱な会話(特に作家の兄)、登場人物の運命が知らず知らずのうちに少しずつ動いていく様は、小説という媒体が最もよく描きうる人生の機微なのだと思います。予定調和の結末には少し物足りなさを覚えてしまうのも事実なのですが。

 

【満足度】★★★☆☆