文学・会議

海外文学を中心に、読書の備忘録です。

シャーリイ・ジャクスン『くじ』

シャーリイ・ジャクスン 深町眞理子

『くじ』 ハヤカワ文庫

 

シャーリイ・ジャクスン(1916-1965)の『くじ』を読了しました。今年読んだ『ニューヨーカー』掲載作品のアンソロジーで気になった作家のひとりである、シャーリイ・ジャクスンの代表的な短編作品が収められたのが本書です。創元推理文庫でも長編が翻訳されているようですね。

 

標題先の「くじ」は予想に違わぬ面白さというか、予想していたよりはずっとまともな話だったのですが、いろいろと考察してみたくなる作品でした。奇妙な「くじ」のルールを紐解いていくと、見えてくるものがあるのでしょう。他に印象に残ったのは、歯の治療のためにニューヨークに向かった女性の悪夢を描いた「歯」で、昔読んだ安部公房の作品が思い出されます。「曖昧の七つの型」に見られる酷薄さなども、個人的には忘れがたいものがありました。

 

社会人になってからの読書は短い時間で読むことができる短編にありがたさを感じていて、本書も会社からの帰路に電車の中で少しずつ読み進めていました。一方で長編作品にしっかりと取り組むだけの時間や体力が年々なくなってきているようにも感じられていて、限られた時間を有効に使いたいとあらためて思うのでした。

 

【満足度】★★★★☆