『緑の家』 岩波文庫
バルガス=リョサ(1936-)の『緑の家』を読了しました。バルガス=リョサの作品を読むのは彼の長編第一作である『都会と犬ども』に続いて二冊目のことでした。せっかくならばバルガス=リョサの作品は可能な限り年代順に読んでいこうという思惑のもとで、彼の長編第二作目である本書を手に取った次第です。
ペルー北西部に位置するピウラの街にある売春宿「緑の家」を軸にして、時間と空間を異にする複数のエピソードが並列的に語られながら、全体としてひとつの物語が形作られるというのが本書の大きな構造です。『都会と犬ども』を読んだときも技巧的な作家だなと感じたのですが、その技法をより洗練させることで完成されたのが本書というわけなのでしょう。しかし、都会の士官学校での生活の重苦しさや逼塞感が行間からにじみ出るように伝わってきた前作とは違って、本書は全体を通じたテーマやメッセージ性は影を潜めているように感じられて、作品としての完成度は高くても物足りなさを覚えてしまうのでした。
【満足度】★★★☆☆