文学・会議

海外文学を中心に、読書の備忘録です。

イアン・マキューアン『初夜』

イアン・マキューアン 村松潔訳

『初夜』 新潮社

 

イアン・マキューアン(1948-)の『初夜』を読了しました。中編小説というべき長さの作品で、原題は“On Chesil Beach”です。イギリス南部のドーセットに実在する浜辺のようですが、どのような含意があるのか(あるいは特にないのか)までは解りませんでした。本書は1962年のチェジル・ビーチを舞台に、結婚式を終えて初めての夜を迎えた男女のすれ違いを描いた作品です。

 

イアン・マキューアンの作品を「どこまでいってもアイロニー」と(いささかネガティブに)評していたのは平野啓一郎さんだったと思うのですが、この小説を読み終えてそこから出てきたものを表現するにはピッタリの言葉なのかもしれません。不首尾に終わってしまった初夜を細密に描写した作品なのですが、「初夜」という邦題も含めて単なるゴシップ以上のものが感じられそうでいて、あまり感じられないのが少し残念なところでした。

 

今回のマキューアン作品も上手だなとは思うのですが、どこか感心しきらないといういつもの読後感に行きつくのでした。本当に上手いなとは思うのですが。

 

【満足度】★★★☆☆