文学・会議

海外文学を中心に、読書の備忘録です。

アンドレ・ジイド『狭き門』

アンドレ・ジイド 川口篤訳

『狭き門』 岩波文庫

 

アンドレ・ジイド(1869-1951)の『狭き門』を読了しました(「ジッド」という表記の方に馴染みがあるのですが、ここでは本書の表記に従って「ジイド」としています)。高校時代だったか大学時代だったかは忘れましたが、一度新潮文庫で読んだような記憶があります。キリスト教的な因習のもとで恋人の求愛に応えることができない女性を描いた作品ということは覚えています。

 

ジッドはモダニズムの作家と言われます。しかし本書のテーマは19世紀的というか極めて古めかしいイメージを持っていたのですが、今回再読してみて少しだけその印象は変化しました。アリサが主人公ジェロームの愛に応えようとしないのは、母の不貞を原因とするものであることが示唆されています。わざわざ(という表現が穏当なのかどうか解りませんが)「力を尽くして狭き門より入れ」と命じる聖書の言葉と、現代的な生の謳歌が相克する時代にあって、アリサの感情にももう少し屈折したものがありそうです。ジッドの他の作品ももう少し読んでみたいと思います。

 

【満足度】★★★☆☆