フッサール(1859-1938)の『デカルト的省察』を読了しました。現象学の創始者である哲学者フッサールの後期の主著といってよいのでしょうか。近世哲学の祖・デカルトにならって、絶対的な明証性からなる学問の基礎を打ち立てようという(現代にあってはすこぶる評判の悪い)高らかな宣言とともに、本書ではフッサールが超越論的現象学と呼ぶ学問領域の特徴が披露されていきます。
しかし、『イデーン』第一巻などの生前に公刊されたフッサールの著作の多くがそうであるように、本書もまた、第五省察で行われた間主観性の分析を除くと、現象学という学問の「永遠の入門編」を読まされている気分になります。『論理学研究』のように明確な同時代の論敵を念頭に置いて記された著作はそうでもないのですが、本書は超越論的現象学のアンセムではあっても、その具体的な思想的進歩や内実が今一つ理解しづらい側面はあるように思います。
20世紀初頭に生まれた現象学という哲学上の立場(「運動」という人もいますが)は、21世紀を迎えた今、どのような価値を持っているのでしょうか。そんなことを考えさせられてしまいます。
【満足度】★★★☆☆