文学・会議

海外文学を中心に、読書の備忘録です。

中畑正志『魂の変容 心的基礎概念の歴史的構成』

中畑正志

『魂の変容 心的基礎概念の歴史的構成』 岩波書店

 

中畑正志の『魂の変容 心的基礎概念の歴史的構成』を読了しました。本書は西洋古代哲学の研究者、とりわけアリストテレス研究者として知られる著者の論文集です。しかし論文集とはいってもそこにはある共通の目的が通底していて、近世・現代哲学において用いられる「object」や「intentionality」といった用語の歴史研究を通じて、それらの概念を用いて展開される現代哲学の理論に新しい光を与えることだといえます。

 

「心的基礎概念」の歴史を丹念に辿っていく分析の方法は圧巻で、日本にも優れた哲学研究者はたくさんいますが、本書のような分析は著者にしかできないものではないかと感じさせられます。著者は、アリストテレスの優れた読解をなしたブレンターノやハイデガーといった哲学者を高く評価していますが(ここには古代西洋哲学を主戦場にしてきた著者のひいき目もあるのでしょうが)、著者の分析はそうした研究の系譜に連なるものだといえるかもしれません。すっかり夢中になって読んでしまいました。

 

【満足度】★★★★★