文学・会議

海外文学を中心に、読書の備忘録です。

アリストテレス『魂について』

アリストテレス 中畑正志訳

『魂について』 京都大学学術出版会

 

アリストテレスの『魂について』を読了しました。哲学を学ぶ人は、本書を読んでいなければ「モグリ」と言われるらしいですが、それほど多方面に影響を与え、歴史上の多くの哲学者たちに言及された書物です。現代の心の哲学の議論においても、本書がなお参照されるべき書物として挙げられていることからも、その息の長さがよく解ります。中畑氏の『魂の変容 心的基礎概念の歴史的構成』を読んだのに引き続いて、本書を再読することにしました。

 

アリストテレスによれば、「魂(ψυχή)」は「可能的に[可能態において]生命をもつ自然的物体の、形相としての実体」ないし「第一次の現実態」であると言われます。さらに「魂をもっている」ことは「生きている」ことと言い換えられ、その「生きている」ことは、思惟[知性]、感覚、場所的な運動・静止、栄養摂取の選言として特徴づけられます。そして、魂の探求においては「その諸対象について――たとえば栄養や、感覚されるもの、思惟されるもの」についての考察が先行すべきであると言われます。

 

現代の心の哲学との関係でいえば、アリストテレスを外在主義のテーゼに引き付けて読み解くこともできるのかもしれません。いずれにしても何度も繰り返し読まなければ解らない書物で、さらには相応の基礎知識や周辺知識も要求されるのですが、しかるべき準備を行いつつ、これからも何度でも紐解いていきたいと思います。

 

【満足度】★★★☆☆