トルストイ(1828-1910)の『クロイツェル・ソナタ』を読了しました。いわゆる「改心」後に著された後期トルストイの作品です。作品に続いて作者による「あとがき」が付されており、「わたしがこの物語でいおうを思ったことの本質と、その中から抽き出すことの出来る推論」が作者自身によって語られています。
どうしても説教臭くなってしまう本作ですが、ヴェートーベンのヴァイオリンソナタの調べに仮託されて、音楽というものが感情の混乱を巻き起こす様を主張したフレーズなど、妙に新鮮で印象的な場面もありました。とはいえ、どこか後期のトルストイにはついていけない部分があって、トルストイが至ったこの境地に共感を覚えるには、もう30年ほどの時間が必要ではないかと思われます。
【満足度】★★★☆☆