文学・会議

海外文学を中心に、読書の備忘録です。

トーマス・クーン『科学革命の構造』

トーマス・クーン 中山茂訳

『科学革命の構造』 みすず書房

 

トーマス・クーン(1922-1996)の『科学革命の構造』を読了しました。1962年に発表された、言わずと知れた科学史の古典です。一体、本書は何本の論文に引用されたのでしょうか。それだけ影響力の大きい書物であるがゆえのことだと思いますが、訳文についてはいろいろと議論を呼んでいるようで、「できれば原書で読んだ方が良い」という話は耳にするのですが、このたび美本が古本屋で安く売っていたことから本書を手に取った次第です。

 

クーンは本書『科学革命の構造』の中で、累積的な科学の進歩という考え方を「パラダイムの転換」と置き換えた上で、パラダイム同士の通約不可能性(incommensurability)を説きます。本書の巻末には、1969年に著されたという補章が付されており、本書出版後に提議されたというパラダイムの多義性に対する論難について、パラダイムを「専門母体」と「見本例」と言い換えてみたり、相対主義であるという批判に抗してみたりしているのですが、科学哲学・科学史においてそれだけインパクトがある論文であったということでしょう。

 

【満足度】★★★★☆