文学・会議

海外文学を中心に、読書の備忘録です。

ヒューム『人間知性研究』

ヒューム 神野慧一郎・中才敏郎訳

『人間知性研究』 京都大学学術出版会

 

ヒューム(1711-1776)の『人間知性研究』を読了しました。経験主義の系譜に連なるイギリスの哲学者であるデイヴィッド・ヒュームは1759年に本書を発表しましたが、これは彼が20代のときに書き上げて匿名で出版した『人間本性論』の第一巻を書き直したものであると言われています。

 

本書『人間知性研究』と『人間本性論』との細かい異同については専門家の研究に任せることとして、本書では『人間本性論』でも展開された議論が端的な表現のもとで述べられています。印象と観念に関する分析や、私たちが自然を観察する場合に多くの場合に見出すことができると考えている因果関係は単なる印象の恒常的連接にすぎず、そこに必然的結合を見出すことは不可能であること、等々。

 

『人間本性論』に含まれていない議論として有名なのは、いわゆる「奇跡論」でしょうか。奇跡を伝える証言の蓋然性を切り口にして語っているのが、なぜかしら斬新な感じを受けます。

 

【満足度】★★★★☆