コーマック・マッカーシー 黒原敏行訳
『越境』 ハヤカワ文庫
コーマック・マッカーシー(1933-)の『越境』を読了しました。『すべての美しい馬』に続く「国境三部作」の二作目です。文庫本にして650ページを超える大部の小説ですが、ゆっくりと読み進めていて先日読み終わったところです。
メキシコとの国境付近で暮らす16歳の少年である主人公のビリー・パーハムは、家畜を襲った狼を故郷のメキシコに帰してやりたいという衝動に突き動かされて、国境を越えてメキシコへと赴きます。この「越境」を契機として、ビリーは悲劇的な運命に巻き込まれていくわけですが、本書で描かれる合計三回の「越境」のたびに大事なものを失っていくビリーの姿は(そしてそれでも越境をやめないビリーの姿は)、物語の終盤にかけてどこか神話的な様相を帯びてきます。これはリアルな青春小説であるというよりは、一種の神話なのだと感じさせられます。
マッカーシーの国境三部作は『平原の町』を残すのみとなりました。この作品は私に一体どんな読後感を残してくれるのでしょうか。
【満足度】★★★★☆