文学・会議

海外文学を中心に、読書の備忘録です。

ディミトリ・フェルフルスト『残念な日々』

ディミトリ・フェルフルスト 長山さき訳

『残念な日々』 新潮社

 

ディミトリ・フェルフルスト(1972-)の『残念な日々』を読了しました。プロフィールによると、著者のフェルフルストは、ベルギーのオランダ語圏であるフランダース生まれ。自身の子ども時代を題材とした連作短編集である本書は、ベルギーとオランダでベストセラーになったとのこと。

 

本書のなかの一篇「収集家」に登場するフランキーは、作者を思わせる子ども時代の主人公に向かって、次のように言い放ちます。「ぼくのお父さんが言ったんだ。きみとはもう遊んじゃ駄目だって」。貧しく下品で飲んだくれの一家ながら、誇り高い一族を自認する主人公は、そんなフランキーに怒りを抱くわけでもなく、突き放したような冷笑で応じるのですが、時が流れて再会したフランキーは、主人公の叔父であるズワーレンに妻を寝取られた惨めで孤独な状況に陥っています。そんなフランキーに対して、主人公は「自分で解決するんだ!」と応答します。

 

残念さへの共感というものが生まれてこないわけではないのですが、何となくもやもやとしたまま読み終わることになりました。

 

【満足度】★★★☆☆