文学・会議

海外文学を中心に、読書の備忘録です。

カート・ヴォネガット『青ひげ』

カート・ヴォネガット 浅倉久志

『青ひげ』 ハヤカワ文庫

 

カート・ヴォネガット(1922-2007)の『青ひげ』を読了しました。初期の長編作品は大学時代に続けて読んだことがあって、『タイタンの妖女』にはいたく感動させられたのを覚えているのですが、ヴォネガットを読むのはそれ以来です。カート・ヴォネガット・ジュニアとして記憶していたのですが、本書の作家名には「ジュニア」は付いていません。

 

本書にはシャルル・ペローの童話『青髭』にならったタイトルが冠せられていますが、本書とペローの童話の共通点は「絶対に開けてはならない部屋」で、物語のカタルシスはそこへと収斂するように進んでいきます。ラボー・カラベキアンという画家くずれの美術収集家の過去と現在をめぐる物語が語られていくなかで、最後にその開けてはならない部屋の扉は開かれるのですが、なんとなく自分のこれまでのことを振り返ってみても、独特な感傷を覚えさせられたのでした。

 

ユーモラスな筆致に魅了されて、ヴォネガットの作品を読み直したくなりました。

 

【満足度】★★★★☆