文学・会議

海外文学を中心に、読書の備忘録です。

コルタサル短編集『悪魔の涎・追い求める男 他八篇』

コルタサル 木村榮一

コルタサル短編集『悪魔の涎・追い求める男 他八篇』 岩波文庫

 

コルタサル短編集『悪魔の涎・追い求める男 他八篇』を読了しました。いわゆるラテンアメリカ文学「ブーム」の作家ひとりであるアルゼンチンの作家フリオ・コルタサル(1914-1984)の短編集です。

 

幻想的な作風と評されるコルタサルの作品ですが、印象に残ったのは「占拠された屋敷」に見られるような不条理さを感じさせる作品や、あるジャズ・ミュージシャンの姿を描いた「追い求める男」などの作品でした。

 

充足を知らない彼は、無限の構成法をたえまない刺激として用いている。彼の音楽は、クライマックスで喜びをもたらすものではない。探求しながらたえず反復していく時に、安直な人間的要素を大胆にふり捨て、その一方で真の人間性をあやまたず捉えていくというその能力を発揮する時に、喜びをもたらしてくれるのだ。

 

少しばかりジャズを聴く者として、即興演奏に向かうジャズ・ミュージシャンをこのように描写してみせるコルタサルの筆さばきにはハッとさせられますし、彼の作品が単なるマジックの焼き直しではないと感じさせられるのでした。

 

彼の代表作といわれる長編作品『石蹴り遊び』もなかなか読めぬまま。少し落ち着いて読書の時間をとりたいのですが。

 

【満足度】★★★★☆