『ハイ・ライズ』 創元SF文庫
J・G・バラード(1930-2009)の『ハイ・ライズ』を読了しました。上海に生まれたイギリスの作家バラードは「人間が探求しなければならないのは、アウタースペースではなく、インナースペースだ」として、SFのニューウェーヴ運動の旗手として活躍したとのこと。1975年に発表された本書はそんなバラードの「中期の傑作」と呼ばれる作品のようです。競うように高層タワーマンションが立ち並ぶ現代の日本においても読まれるべき作品とも言えるかもしれません。
40階建ての巨大マンションの上層階・中層階・下層階の住人の間で繰り広げられる抗争にリアリティが感じられないのは、作者が意図してのものだったのか、私の感性不足・読解不足なのか解らないのですが、とにかく不思議な感覚が付きまとう読書となりました。些細な出来事をきっかけにして、昼は何事もない日常生活を過ごしながら、夜は子どもじみた欲望むき出しの抗争を続けるマンション住人の姿は、現代においても何かを象徴し得るものになっているのかもしれませんが。
バラードの他の作品もチェックしてみたいと思います。その後また本書を読み直してみると、また違った感想になるのかもしれません。
【満足度】★★★☆☆