文学・会議

海外文学を中心に、読書の備忘録です。

村田沙耶香『タダイマトビラ』

村田沙耶香

『タダイマトビラ』 新潮文庫

 

村田沙耶香の『タダイマトビラ』を読了しました。かつて三島賞の候補作になった頃から話題の本で、私もずっと気になってはいたのですが、これまで読まずにいた作品です。『コンビニ人間』で芥川賞を受賞し、新作も大きな話題になっている村田さんですが、昨今の日本における純文学ブーム(又吉さんの影響が大きいと思いますが)も手伝って、本屋で平積みになっている作品を見かけることも多くなりました。

 

本書は壊れた家族生活を送る主人公の女性(少女)が、「カゾク」というシステムの生まれる前の世界へと回帰する物語なのですが、まさしく「クレイジー」なラストシーンに至るまで、ことごとく読者の予想を裏切っていく作品でした。読み口としては、セサル・アイラの作品に近いものを感じたのですが、不条理な展開を導いていく際の論理の突き詰め具合でいえば、本書に軍配が上がるのではないかと思います。新しい世紀の小説というものはこういうものかと思わされました。

 

【満足度】★★★★★