文学・会議

海外文学を中心に、読書の備忘録です。

島田荘司『鳥居の密室 世界にただひとりのサンタクロース』

島田荘司

『鳥居の密室 世界にただひとりのサンタクロース』 新潮社

 

島田荘司の『鳥居の密室 世界にただひとりのサンタクロース』を読了しました。島田さんの小説作品はほとんど読んでいて、その文体も含めて好きな作家ではあるのですが、近年は会話の流れの中で状況説明を行う書きぶりが目につくことも多くなってきました。相変わらず泣ける話を書かせると上手いと思うのですが、私よりも若い世代の人たちにはどのように受け取られるのでしょうか。

 

本書は御手洗潔を主人公とするシリーズのひとつで、同じく新潮社から出ている「進々堂」シリーズともいうべき、御手洗潔京都大学医学部に在籍していた時代の探偵譚を描いた作品です。トリックをどうこう言うのがまるで野暮になってしまうのはいつもの島田作品と同様で、その奇想ぶりと人情話との噛み合い具合を楽しむべき作品なのですが、その部分についても物足りなさを感じてはしまうのでした。

 

【満足度】★★★☆☆