文学・会議

海外文学を中心に、読書の備忘録です。

信原幸弘『心の現代哲学』

信原幸弘

『心の現代哲学』 勁草書房

 

信原幸弘の『心の現代哲学』を読了しました。本書の出版は1999年で、今からちょうど20年前のこととなります。「心とはいかなるものか」という問いに対して、認知科学や脳神経科学などの成果に寄り添うかたちで語ろうとするならば、この20年間での科学の進展というのは無視できないわけで、現在の地点から本書を読むこと自体に対する「時代遅れ感」を意識しながらの読書となりました。

 

心というものの有様を問うために志向性と感覚質の自然化を試みるなかで、命題的態度や翻訳可能性、言語化可能な性質といった言語論的な分析哲学の道具立てが登場するあたりは、哲学以外の分野の人にとって疑問を感じるのではないかというのが素朴な感想として残りました。そのようにしてなされた分析が、心の「哲学」がなし得る重要な貢献なのか、あるいは単なる妄言でしかないのか、いささか自信がなくなってきます。

 

哲学がなす思索よりも、AIなどの技術的進歩の方がはるかにスピーディに進行していて、心の哲学という分野については特に、哲学の営みの意義についての疑問が沸き上がってしまうのですが、引き続き時間を見つけて最新の議論についてもフォローしていきたいと考えています。

 

【満足度】★★★☆☆