文学・会議

海外文学を中心に、読書の備忘録です。

ホセ・ドノソ『夜のみだらな鳥』

ホセ・ドノソ 鼓直

『夜のみだらな鳥』 水声社

 

ホセ・ドノソ(1924-1996)の『夜のみだらな鳥』を読了しました。いわゆるラテンアメリカ文学「ブーム」の作家のひとりで、近年は特に評価の高いのが、チリの作家であるホセ・ドノソです。本書はドノソの代表作で、邦訳は長い間入手しづらい状況が続いていたのですが、昨年二月頃に装いも新たに水声社から出版されました。再販を楽しみに待っていた海外文学作品というのも、私にとっては珍しい存在です。

 

人体改造による変身譚という本書のプロットがそれほどグロテスクには感じられないのは、魔術的な筆致の中で時系列も入り乱れて展開される物語が、夢とも現実ともつかないものとして読者の前に立ち現れてくるからなのでしょう。それなりに長い物語なのですが、飽きもせず少しずつ読み進めて、充実した読書体験となりました。今後、ドノソのもう一つの代表作である『別荘』を読むのも楽しみです。

  

【満足度】★★★★☆