文学・会議

海外文学を中心に、読書の備忘録です。

サド『短編集 恋の罪』

サド 植田祐次

『短編集 恋の罪』 岩波文庫

 

サド(1740-1814)の『短編集 恋の罪』を読了しました。「サディズム」という言葉の由来となったといわれているフランス貴族、マルキ・ド・サドの短編選集です。本書カバーに描かれた解説によれば、本作に収録されているのはサドの「適法の小説」から選ばれた4篇とのこと。フランス革命(1789年)の時代に生きたサドの小説を読むのは今回が初めての経験でした。

 

悪徳が美徳を蹂躙する様を描くことこそがサドの作品の神髄であり、本書に付された小編「三文時評家ヴィルテルクに答える」を読むと、それが意識的な小説作法として読者を惹きつけるために行われたものであることが窺えます。現代日本の「昼ドラ」の作劇法にも似たような側面はあると思うのですが、シンプルに頷かされる部分もある主張だと思います。本書についても(筋立ての強引さに呆れながらも)読まされてしまう読書体験となりました。

 

ただ、いずれは『悪徳の栄え』や『新ジュスティーヌ』も読んでみたいとは思うのですが、世にはびこる悪徳の浸食具合に対して、しばらくはもういいかなというのが正直な感想ではあります。

 

【満足度】★★★★☆