文学・会議

海外文学を中心に、読書の備忘録です。

津田敏秀『医学と仮説 原因と結果の科学を考える』

津田敏秀

『医学と仮説 原因と結果の科学を考える』 岩波書店

 

津田敏秀の『医学と仮説 原因と結果の科学を考える』を読了しました。同じ著者の『医学的根拠とは何か』よりも前に発表されたのが本書で、力点は多少異なりながら、本書においても疫学的なアプローチ(というよりも著者の直接的な言い方を借りれば「科学」や「因果関係」の本質というもの)への無理解が、医学界に引き起こす害悪についての主張が展開されています。

 

科学哲学者の伊勢田氏と本書の著者との間に、特にヒューム解釈をめぐって(作家の川端裕人氏のブログのコメント欄を舞台に)議論が行われたことは何となく知ってはいるのですが、その発端になったのが本書です。たしかに「ヒュームが原因を定義した」と言われると、私も「ん?」と思ってしまう部分はあるのですが、そんなところで引っかかってしまうのは、本書にとっても大変もったいないことだとまたしても感じるのでした。

 

【満足度】★★★☆☆