文学・会議

海外文学を中心に、読書の備忘録です。

冨田恭彦『観念論の教室』

冨田恭彦

『観念論の教室』 ちくま新書

 

冨田恭彦の『観念論の教室』を読了しました。本書の主題となっているのは、ジョージ・バークリーの観念論(彼自身の言い方を使えば「物質否定論」)なのですが、「観念」という言葉のルーツを古代ギリシアの原子論、そして近代哲学の祖・デカルトに遡りながら、イギリス経験論の先達であるロックや、さらにカントの超越論的観念論として結実する後世ドイツの哲学までが論じられています。

 

ロック研究者である冨田氏は、本書において、ロック批判を展開したバークリー哲学の批判的読解を行うのですが、冨田氏のバークリー批判のポイントを端的にいえば、それはバークリーが「観念を出発点として選んだこと」だといえます。『ロック哲学の隠された論理』におけるロック解釈から、『観念論ってなに?』等の著作を経て展開された冨田氏のバークリー哲学の批判的読解の論述は、本書で提示された「ヒベルニア路線」という説明において、最大の解りやすさを得ているのではないかと思います。マスターアーギュメントに関する論も興味深く読むことができました。

 

【満足度】★★★★☆