『翻訳はいかにすべきか』 岩波新書
柳瀬尚紀(1943-2016)の『翻訳はいかにすべきか』を読了しました。「翻訳という語は、筆者にとって、あくまで日本語である」と本書の冒頭で宣言されていますが、「日本語」への翻訳にこだわる著者は、本書において英和辞典そのままの訳語を当てた直訳や代名詞の羅列をこれでもかとばかりに批判していきます。
柳瀬氏に言わせると名文家で知られるアップダイクは日本において翻訳者には恵まれておらず、『フィネガンズ・ウェイク』の翻訳をものした柳瀬氏は、もちろん『ユリシーズ』の翻訳についても一家言を持っています。氏の「翻訳」に対する並々ならぬ情熱やプロ意識を十分に感じることができて、『フィネガンズ・ウェイク』も読んでみようかなと思うのでした。
【満足度】★★★☆☆