文学・会議

海外文学を中心に、読書の備忘録です。

トンミ・キンヌネン『四人の交差点』

トンミ・キンヌネン 古市真由美訳

『四人の交差点』 新潮社

 

トンミ・キンヌネン(1973-)の『四人の交差点』を読了しました。キンヌネンはフィンランドの作家で、デビュー作である本書が国内でベストセラーになるとともに16か国で翻訳されたとのこと。新鋭作家との出会いの場を作ってくれるのが、新潮クレストブックスの良いところですね。

 

本書はプロローグとエピローグをなす部分を除いて四章からなる構成で、その四章のそれぞれには、ある家族の三世代にわたる四人の人物の名前が冠せられています。そしてそれらの各章において、章題に登場する人物のエピソードが年代記ふうに綴られていくことで、本書全体を通じて四人の一生とひとつの家族の姿が描かれていくことになります。

 

本書で描かれているのは、人生に孤独を感じて苦闘する人々の姿です。ひとつの家、ひとつの家族をなしながら、お互いの思いは、しばしばすれ違いを見せます。安易な調和がもたらされない状況において、一筋の繋がりが見え隠れする様を描いてみせる筆致には好感が持てました。

 

【満足度】★★★☆☆