文学・会議

海外文学を中心に、読書の備忘録です。

ボッカッチョ『デカメロン』

ボッカッチョ 平川祐弘

デカメロン』 河出文庫

 

ボッカッチョ(1313-1375)の『デカメロン』を読了しました。『千一夜物語』の影響を受け、そして後世の『カンタベリー物語』に影響を及ぼしたと言われる作品で、ルネサンス文学の先駆けであるダンテの『神曲』と比して、「人曲」と呼ばれることもある散文作品です。

 

いわゆる「枠物語」の形式を採る作品ですが、その枠部分の舞台となるのは14世紀のフィレンツェです。ペストの猛威が振るうフィレンツェを離れて片田舎にやって来た十人の男女が、十日間をかけて一人一話ずつの物語を述べるため「十日物語」と訳されることもあるようです。物語中の登場人物が行う性的なほのめかしや貞操観念から外れた大胆な行為など、猥雑で自由な物語が展開されます。

 

旅行で訪れたフィレンツェの街並みを思い浮かべながら読むと(直接的にフィレンツェ市中が舞台になった作品は多くありませんが)、また感慨深いものがあります。

 

【満足度】★★★☆☆