文学・会議

海外文学を中心に、読書の備忘録です。

M・オンダーチェ『イギリス人の患者』

M・オンダーチェ 土屋政雄

『イギリス人の患者』 新潮社

 

M・オンダーチェ(1943-)の『イギリス人の患者』を読了しました。オンダーチェは、英連邦王国セイロン(現在のスリランカに位置していた国)に生まれ、11歳でイギリスに移住した後、カナダの大学で学んでいます。本書は1992年のブッカー賞作品ですが、作品自体よりも映画の方がむしろ有名なのではないかと思います。私は映画は見ていないのですが。新潮社の「現代世界の文学」の一冊として翻訳が刊行されています。

 

第二次大戦末期のイタリアで出会った四人の男女を軸に展開される詩的な物語です。思い火傷を負ったイギリス人と思しき男性と彼を看病する看護師のハナ、ハナの父の友人であり元諜報部隊のカラバッジョ、シーク人である地雷処理工兵であるキップ。四人の運命が複雑に絡まりながら、悲しくも美しい結末に向けて物語は進んでいきます。たしかに、実に映画的な作品だなと思わされます。

 

【満足度】★★★☆☆