文学・会議

海外文学を中心に、読書の備忘録です。

コーマック・マッカーシー『血と暴力の国』

コーマック・マッカーシー 黒原敏行訳

『血と暴力の国』 扶桑社ミステリー

 

コーマック・マッカーシー(1933-)の『血と暴力の国』を読了しました。国境三部作の完結から7年後の2005年に発表された“No Country for Old Men”の邦訳です。メインストリームの文学というよりはハードボイルド、むしろクライム・ノベルといった趣の作品です。相変わらず「苛烈な」という表現がぴったりとくる作品世界が展開されています。

 

表の主人公であるモスが偶然に出くわした犯罪現場から金を持ち出した理由、そして追っ手である殺人者シュガーが非道な犯罪を繰り返す理由が明確に語られないところに、いつものマッカーシー節というべきものが感じられます。そして、プロットにおいては狂言回しの役回りを押し付けられている保安官ベルこそが、本書の導入者として欠かすことのできない人物であることが作品全体を通して浮かび上がってきます。

 

【満足度】★★★☆☆